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医療AIはどこまで承認される?AI医療機器の薬機法対応と承認プロセスを解説#144他RWD関連TOPIXコラム

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 医療分野における人工知能(AI)の進化は目覚ましく、診断支援から治療計画、創薬支援に至るまで、その応用範囲は日々拡大しています。

しかし、その技術的な進歩に伴い、人命に直結する医療機器としての安全性と有効性を確保するための法規制と承認プロセスの理解が開発者にとって不可欠です。

特にAIを組み込んだ医療機器は、従来の医療機器にはなかった特性を持つため、日本の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)のもとで、特性に応じた承認プロセスが示されています。

本記事では、AI医療機器の定義から、承認審査の具体的な流れ、そして独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)が定める規制までを、研究者や開発者が戦略的に押さえるべきポイントに焦点を当てて解説します。

AI医療機器とは?定義と薬機法上の位置づけ

 AI医療機器の多くは、医療機器プログラム(SaMD:Software as a Medical Device)として医療行為に寄与する特性を持ちます。この新しい形態の機器を薬機法のもとで適切に位置づけ、規制の対象とすることは、技術革新を促しつつ国民の安全を守るために重要な取り組みです。

医療機器プログラム(SaMD)の定義と分類

 AIを搭載した医療機器の多くは、「医療機器プログラム」として薬機法上の規制を受けます。PMDAでは、医療機器プログラムを以下のように定義しています。

「医療機器としての目的性を有しており、かつ、意図したとおりに機能しない場合に患者(又は使用者)の生命及び健康に影響を与えるおそれがあるプログラム(ソフトウェア機能)(人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(一般医療機器に相当するもの)を除く。)」

引用:プログラム医療機器-1.医療機器該当性について(PMDA)

この医療機器プログラムは、不具合が生じた際の人体へのリスクの程度に応じて、以下の4つのクラスに分類されます。開発の初期段階でプログラムの使用目的と効果を踏まえた設計をする必要があります。

  • クラスⅠ(一般医療機器): リスクが極めて低いもの(例:視力検査プログラム)
  • クラスⅡ(管理医療機器): リスクが比較的低いもの(例:行動変容を促すアプリ、家庭用診断支援プログラム)
  • クラスⅢ・Ⅳ(高度管理医療機器): クラスⅢはリスクが比較的高いもの、クラスⅣは不具合が生じた場合に生命の危険へ直結するおそれがあるもの(例:放射線治療計画プログラム、遺伝子変異解析プログラム)

出典:プログラム医療機器の普及促進を

なぜAI医療機器には特別な審査が必要か

 従来の医療機器は基本的に性能が固定されているのに対し、AI医療機器、特にAdaptive AI(適応型人工知能)と呼ばれるものは、市販後も継続的に学習し、その性能が変化する可能性があります。
この変化し続ける特性があるため、AI医療機器には特別な審査が必要となります。

従来と全く異なる審査方法が設けられているというよりは、既存の枠組みを生かしつつ、そのAI医療機器に合わせて、追加の評価項目が発生する考え方に近いといえます。
市販後も含め、AI医療機器のトータルライフサイクルを見据えた開発が必要です。

専門機関によるAI医療機器の承認プロセス

従来の医療機器と同様、AI医療機器においても、PMDAによる承認取得プロセスは、研究成果を実際の医療現場へ届けるための重要な最終段階です。このプロセスを円滑に進めるためには、PMDAとのコミュニケーションと、申請資料を適切に準備することが不可欠です(参考1,2)。

承認取得までの流れと相談制度の活用

AI医療機器の承認取得では、開発初期から規制当局との対話を組み込んだ進め方が重要です。

ここでは3つのステップに分けて説明します。

  1. 事前相談(対面助言)の活用:
    開発前や初期段階から対面助言を活用し、PMDAの見解を踏まえながら開発方針を整理することが重要です。対面助言では、想定する使用目的や臨床的位置づけに加え、必要とされる試験の内容や治験の要否、承認申請時に求められるデータパッケージの考え方について具体的な助言を受けることが可能です。この段階で、評価指標や試験プロトコル、データ設計の妥当性まで踏み込んで確認しておくことで、後続工程における手戻りのリスクを大きく低減できるでしょう。対面助言は複数回の相談区分が設けられています。
  2. 治験や性能評価などの試験:
    有効性・安全性を裏付けるため、必要に応じて臨床試験/治験や性能評価試験が実施されます。AI医療機器であることのみを理由にアルゴリズムの内部構造のみが独立して審査されるわけではなく、一般の医療機器と同様、入力に対して適切な出力が得られているかという観点を含め、有効性・安全性が総合的に評価される点が特徴です。バリデーションデータやテストデータを適切に分離し、評価バイアスを排除した設計が求められます。評価に用いるデータの出所や質、対象疾患の検出率・偽陽性率・偽陰性率など性能指標を設定し、継続的に担保されることが求められます。変更計画確認制度(IDATEN:Improvement Design within Approval for Timely Evaluation and Notice)の活用可能性を含む将来的な性能向上や機能追加を見据えた変更管理の考え方についても、この段階から検討しておくことが重要です。
  3. 承認申請:
    これらの試験結果に基づき承認申請を行い、有効性・安全性に加えて、品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)や製造販売業者としての体制を含めた総合的な審査が実施されます。特にAI医療機器においては、市販後のデータ蓄積や性能変化を前提とした変更管理の考え方が重要となり、あらかじめ想定される変更範囲やその評価方法を含めた管理方針が、審査上の重要なポイントとなります。

審査に必要な資料と技術的評価ポイント

まず、審査に必要な資料については、主に以下のようなものが該当します。

  • 承認申請書
    使用目的、機能、入力・出力、性能など、対象となる医療機器を特定するための基本情報を記載した資料
  • 有効性や安全性を示す資料
    臨床試験や性能評価試験の結果など、有効性及び安全性を裏付ける資料
  • データに関連する資料
    学習データの出所・量・収集施設、正解ラベルの作成方法など、AIの性能評価の根拠となるデータに関する資料
  • 品質管理に関するQMS資料
    製造及び品質管理の方法や体制が適切であることを示す資料
  • 製造販売体制に関する資料
    製造販売業者としての責任体制や安全管理体制を示す資料

技術的な評価ポイントとしては、臨床的意義やアルゴリズムの妥当性が主に挙げられます。学習データや評価データのバージョン管理や、比較対象や入出力の妥当性なども評価の対象です。

AI医療機器で求められるデータと評価の実務

 日本ここまで、定義や承認プロセス、評価ポイントについて整理してきました。ここからは実務において、どのような点について意識が必要なのかを説明します。

AIを用いた医療機器の場合、学習データに基づいて判定や予測が行われるため、その設計やバイアスの対策が必要になります。

また、AI医療機器は承認後も改良し続ける特性があるため、その改良計画自体を承認する制度(IDATEN制度)の理解も必要です。

学習・評価データの設計とバイアス対策

学習や評価に必要なデータは、匿名化により個人情報の保護がなされたものであり、バイアスの発生を防ぐための措置が施されたものである必要があります。

  1. 適切に匿名化された医療データの利用:
    医療データは、個人情報保護法や、厚生労働省の「医療デジタルデータの AI 研究開発等への利活用に係るガイドライン」に沿って(参考3)、適切に取り扱う必要があります。データの匿名化・非識別化の具体的な手順や、データのトレーサビリティの確保は、規制遵守の前提です。提供されたデータの目的外利用の禁止など、倫理的な配慮が必要不可欠です。
  2. バイアス対策の実務:
    承認審査では、全体的な性能だけでなく、年齢層、性別、患者背景因子、使用機器メーカーごと、疾患のサブタイプごとに性能を層別化して評価し、特定集団で性能が異常に低下していないかを検証することが求められます。バイアスを生じさせる可能性のある要因を事前に特定し、データ設計段階で防止する必要があります。バイアスによるリスクを低減するための措置(例:市販後の追加学習計画、学習データ/バリデーションデータ/テストデータなど各種データの区別)を明確にすることが重要です(参考4)。

Adaptive AIの対応とIDATEN制度の概要

Adaptive AIは市販後も継続的に学習・改良をするAIを指し、これに対応するため、規制当局は従来の承認制度に加え、変更管理を前提とした枠組みの整備を進めています。

日本においては、PMDAがIDATEN制度を導入しており、こうしたニーズに対応する制度の一つと位置づけられています。

IDATEN制度は2020年に導入され、将来的に改良が見込まれる医療機器について、あらかじめ変更計画自体を確認・承認する仕組みです。これにより、計画された範囲内の変更であれば、都度の一部変更承認申請を簡略化できる可能性があり、プログラム医療機器にも適用可能とされています。実務上は、PMDAとの開発前相談を通じて計画の妥当性を確認したうえで申請・届出を行い、承認された変更計画に基づいて運用する流れとなります(参考5)。

IDATEN制度では、事前に合意した変更計画の範囲内であれば、軽微な変更については届出や簡略化された手続きで対応できる場合があります。

AI医療機器の承認事例と最新の規制動向

現在ではAIを搭載した内視鏡、AIによる画像読影支援、脳外科手術のシミュレーションなどが日本国内で承認事例として挙げられます。これらの事例は、医師の診断プロセスの中で、AIが診断時間の短縮や見落とし率の低下を担うことで、効率や治療の精度を向上させることが期待されるものです。

最新の規制動向としては、IDATEN制度の詳細を定めた「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンス(第二版)」(参考6)がまず参考すべき資料の一つです。これは令和6年に発出されたものであり、本記事でも触れてきた、AI医療機器の変化し続ける特性との付き合い方が示されているものです。

プログラム医療機器関連の通知はPMDAのページでまとめられています。

該当性の解説、計画変更の確認申請、サイバーセキュリティなど、多岐にわたって通知がまとめられています。

参考:プログラム医療機器関連通知

まとめ:医療AI時代の開発者が押さえるべきポイント

本記事では、AI医療機器の定義から承認プロセス、評価の考え方、そしてIDATEN制度に代表される最新の制度までを整理してきました。最後に、開発者として特に重要となるポイントを改めてまとめます。

1.AI医療機器は従来の医療機器とは異なり、市販後のデータ蓄積や改良によって性能が変化し得る点が本質的な特徴です。そのため開発段階だけでなく、市販後を含めたライフサイクル全体での管理を前提に設計することが求められます。

2.承認審査においてはアルゴリズムそのものよりも、入力に対して適切な出力が得られているかという観点で、有効性・安全性が評価されます。個人情報保護への適切な対応を前提として、学習・評価データの設計や、バイアスを排除した評価手法の構築が重要です。

3.開発前や初期段階でPMDAとの対面助言を活用し、開発初期から規制要件を踏まえた設計を行うことは、以降の手戻りの防止という観点でも非常に重要です。評価指標や試験設計、データパッケージの考え方について早期にすり合わせておくことで、承認までのプロセスを円滑に進めることが可能です。

4.IDATEN制度に見られるように、AI医療機器は「変更を前提とした管理」がポイントです。将来的な機能追加や性能改善を見据え、あらかじめ変更計画や評価方法を整理しておくことが、継続的な製品改善と規制対応を両立させるうえで重要となります。

AI医療機器の開発は、単なる技術開発にとどまらず、規制・データ・臨床の3つを横断的に捉える必要があります。これらを初期段階から統合的に設計することで、患者や医療現場への提供を迅速化できるでしょう。


参考文献

(参考1)独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」
(参考2)独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「対面助言のうち、プログラム医療機器の薬事開発総合対面助言に関する実施要綱」
(参考3)厚生労働省「医療デジタルデータの AI 研究開発等への利活用に係るガイドライン」
(参考4)一般社団法人 日本医療機器産業連合会 法制委員会AI 活用プログラム医療機器における審査関連研究 WG「AI 活用プログラム医療機器における審査に関する検討―研究結果の報告―」
(参考5)独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療機器に特化した承認制度について」
(参考6)独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プログラム医療機器の特性を踏まえた適切かつ迅速な承認及び開発のためのガイダンス(第二版)の公表について」


【監修医師】大塚 真紀

東京大学大学院医学系研究科卒。医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医。都内の大学病院勤務を経て、夫の仕事の都合で渡米し、アメリカでは研究員として勤務。現在は日本に帰国し、在宅で医療関連の記事の執筆や監修、医療系YouTube監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作、医療系生成AIのアドバイザー、オンライン診療、医学意見書作成、看護師や一般向けの書籍執筆など幅広く行う。

【執筆者】吉村友希

医薬品開発職を経て医療ライターに転身。疾患・DX/AI・医療広告・薬機法など、医療と健康に特化した記事制作を担当。英語論文を活用した執筆やSEO対策も可能。YMAA認証取得。

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