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2021.11.16

QOLとは 「心身ともに健康で輝くような状態」

QOLとは 「心身ともに健康で輝くような状態」

QOLとはクオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略称で、「生活の質」や「人生の質」という意味です。QOLは、生活や人生が豊かであるということの指標となる概念ですが、ここでいう豊かさとは物質的なもののみならず、生きがいや自己実現など精神的な満足度が重要視されます。QOLが高いかどうかは、そのほか心身の健康や良好な人間関係、やりがいのある仕事や充実した教育、余暇の過ごし方など多様な観点から評価されます。また、人によって感じる豊かさもさまざまであるといえます。

 

QOLは、とくに医療や福祉の分野で使われる用語です。病気にかかったり、加齢による身体能力の低下でそれまでと同じ生活が送れなくなったりしてしまうということは多々あります。そのときに、いかに生活の質を保ち、あるいは向上を目指していくか考える中で、QOLは非常に大切な概念です。

 

QOLの考え方は、1948年の世界保健機関(WHO)憲章における「健康とは、単に病気や病弱の状態ではないというだけでなく、肉体的、精神的および社会的にもすべて良好な状態である」(*1)という定義に端を発し、1961年に米国の公衆衛生医であったハルバート・ダン博士によって提唱された「ウェルネス」=「心身ともに健康で輝くような状態」という、「健康」よりもさらに視野を拡げた考え方に基づくものです。

 

*1: https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000026609.pdf

 

 

医療におけるQOL

QOLという概念は、医療のあり方とともに発展してきました。従来の西洋医学では、病気の原因を取り除いて人の身体を治すことに重きを置かれていたために、「病気は治ったが患者は死んだ」と揶揄されるような問題が生じました。

 

そこで、病気を治すために患者の人間らしい生活を著しく損なうことは本末転倒であるという考えから、QOLが重要視されるようになったのです。たとえば、効果が同じであれば、機能をできるだけ温存するために縮小手術を選択するなど、治療効果だけではなくQOLも考慮した医療が行われるようになってきています。

 

 

QOLとがん

がんの闘病生活においては、患者のQOLを考慮することが非常に大切です。がんの進行に伴う食欲不振や下痢、嘔吐、出血や貧血などのさまざまな不快な症状、進行がん・末期がんの患者を苦しめるがんの痛みなどを取り除き、患者の生活の質の維持に努める必要があります。

 

2002年にWHOは、緩和ケアについて「生命を脅かす疾患に対し、早期から肉体面や精神面などトータルに対処することでQOLを改善するためのアプローチである」と再定義しました。それまでのがんの治療では、まずがん治療と治療中に生じる痛みなどの苦痛を和らげる「支持療法」を行い、その後がんを治癒するための治療の効果が得られなくなると、痛みの症状などを取り除く「緩和ケア」へ移行するという方法がとられていました。

 

WHOの再定義や、早期からの緩和ケアはQOLを改善しさらに生存期間も延ばす可能性があるという研究結果もあって、がん治療の現場では、QOL向上のために緩和ケアを初期から導入するという考え方に変わってきています。(*2)

 

*2: https://www.yakult.co.jp/healthist/243/img/pdf/p20_23.pdf

 

 

ADLの自立は必ずしもQOL向上につながらない

QOLと密接な関わりがある用語にADL(Activity of Daily Life)があります。ADLは、日常生活を送るために必要な基本動作のことで、食事や更衣、排泄、入浴などがこれにあたります。多くの人が、自分で食事ができたり、また家族や友人など親しい人と会食したりすることに幸福感を抱きます。また、排泄を自力で行うことは、個人の尊厳を守ることにつながるでしょう。こういったことから、ADLとQOLは密接な関係があり、ADLの維持はQOLを向上させるために大きな役割を担っているといえます。

 

もっとも、ADLの自立が必ずしもQOLの向上につながらない場合もあります。たとえば、長い時間をかけて着替えや入浴を自力で行うことよりも、誰かの助けを借りるなどして短時間で済ませ、1日の残りの時間を長く自分の好きなことのために使うほうが、人によっては満足感が大きいということもあるでしょう。そこで、かつてはADLの自立を目標としていた医学的リハビリテーションも、近年ではQOLの向上に重点を置くようになってきています。

 

 

QOLの評価方法

QOLを評価するために、さまざまな方法が考案されています。たとえばSF-36と呼ばれる代表的な評価法は、科学的な信頼性の高さから国際的に広く使用されています。SF-36は、36の問いによって8つの健康概念「身体機能」「日常役割機能(身体)」「体の痛み」「全体的健康感」「活力」「社会生活機能」「日常役割機能(精神)」「心の健康」のスコアを算出し、QOLを評価します。

 

ほかにも、WHOが開発したQOL-26やQOL-100などが知られています。

 

 

IoTやAIを活用したQOL向上

私たちの生活を豊かにするテクノロジーは、日々目覚ましく進歩しています。ITやAIなどさまざまなテクノロジーが研究、開発され、QOL向上のための活用が進められています。

 

たとえば、高齢化社会が進む中、IoTによるヘルスケアが注目されています。日常生活における高齢者の動作をセンサーで取得し、AIで分析することで、認知症などの病気の早期発見が可能になります。

また、モーションセンサーのテクノロジーを利用して24時間様子を見守ることができます。これにより自宅で今まで通りの生活を続けたいという高齢者の思いに応え、QOLの向上に貢献できるのです。

 

また、AIによる死期の予測の研究も行われています。死期の予測は、がんなどの病気において、治療から緩和ケアへ移行するタイミングの判断に役立てることができます。また、自宅で最期を迎えたいと思っていても、実際には病院へ運ばれ、集中治療室で亡くなってしまう場合は少なくありません。死期が予測できれば、そういった願いをかなえることも可能になるでしょう。

 

テクノロジーの発展により、今後さらなるQOLの向上が期待されます。

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