「システム上できません」はもう言わない。
現場からの複雑なデータ抽出依頼に応える方法
現場の期待に応えられないもどかしさ
「そのデータ抽出は、システム上できません」
病院で働くシステム担当者であれば、一度は口にしたことがある言葉かもしれません。
その言葉を口にした時の、相手の困った表情を前に、期待に応えてあげられないもどかしさを、感じたこともあるでしょう。
現場からのデータ抽出のリクエストは、往々にして曖昧で、複雑で、局所的な発想に基づいています。一方でシステムは、定義され、構造化され、全体を網羅し、矛盾がないことを前提に作られています。この前提の違いが、両者の間に静かなすれ違いを生み出します。
データ抽出の3つのポイント
データ抽出のためには、「そもそも元になるデータが記録されていること」と「抽出条件を設定すること」が重要です。さらにもう一つ重要なのは、抽出後に「どのように活用したいか」という目的が明確になっていることです。
「明日の退院患者を抽出して」と言われれば「明日の日付で退院予定が記録されている(フラグが立っている)患者リスト」を出せばいいのですが、「明日退院できる患者を抽出して」となれば、そこには「退院できる状態」の定義が必要になります。その「状態」を判断するロジックは医療スタッフの頭の中にあるので、システム担当者としてはそれを引き出して、データ抽出の条件を設定することになります。
多くの医療スタッフは、患者の状況判断などをロジカルに考えていても、データ抽出のためのSQL的な条件設定を意識しているわけではないので、初めから「期間は〜〜で、〜〜の条件で、〜〜は除外して」というリクエストを出すのは苦手です。
複雑な抽出依頼に応える方法
そのため、ここからがシステム担当者の腕の見せ所です。判断基準を医療スタッフからスムーズに引き出すためには、一緒に電子カルテを見ながら話をする方が効率的です。「DPCの期間Ⅱまであと2日以内で、明日以降の手術や生理検査のオーダーが入っていない患者、例えばこの患者とか…」といった具合で、現在入院中の患者リストから抽出条件を確認し、要になる検査、除外していい検査など、とりあえず抽出しておいて欲しい要件を整理してみましょう。
その時に、医療スタッフがわかりやすいように電子カルテの情報や患者情報を一覧で確認できるシステムなどがあると、さらに相互理解が深まり、効率よく話が進みます。
現場からのデータ抽出依頼は「仕様」ではなく「状況説明」から入ります。抽出したデータで「何を判断したいのか」「どんな目的で見たいのか」を聞きながら、抽出条件を整理していきましょう。
石井 富美
ヘルスケアビジネス経営人材育成研究所 所長
多摩大学大学院経営情報学専攻科修了経営情報学修士(MBA)
IT企業でのソフトウェア開発経験を活かし、多くの医療機関経営に携わった。社会人大学院で地域医療経営の講座を持ちつつ、地域包括ケアのまちづくりアドバイザー、医療介護事業の経営サポート、医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行っている。
