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DPC分析だけでは不十分?
経営改善を加速させる“日次データ”の活用

DPC制度(DPC/PDPS)が導入されてはや20年、皆さんの中にも、DPCデータを毎月の経営分析に活かしているという方は多いと思います。DPCデータは病院の経営分析を大きく進化させた一方、過去の実績の振り返りに留まり、激変する経営環境の中で求められる「明日からどう動くか」という問いには答えを出すことができません。昨今、電子カルテや医事会計システムから生成され、日次更新されるデータ(日次データ)の活用を検討する病院も増えています。今回は経営改善を加速させると期待される「日次データ」の活用について解説します。

経営分析に新たな視点をもたらしたDPCデータ

経営管理における実績把握の基本は、「日報」「週報」「月報」「年報」といった時間軸での管理です。組織によっては四半期単位で管理しているところもあるでしょう。

これまで多くの病院では、レセプト情報をもとに収益を把握し、診療科別の患者数や診療行為別の算定状況を分析するのが定番でした。こうした分析に、新たな視点をもたらしたのがDPCデータです。

DPC制度によって、全病院共通の様式で、病名コードで整理した診療実績データが作成されるようになりました。これにより分析の軸に「病名別」という新しい視点が加わりました。例えば、大腸ポリープ切除について、どの診療科でどのような医療サービスが提供され、どの程度の収益性があるのかを比較することが可能になりました。

DPCデータの分析は「過去の振り返り」

さらに、包括払いとなる医療行為について、実際の医療提供内容を評価すること(包括出来高差額分析)も可能になりました。これによりクリニカルパスの見直しや他院との比較を通じて、医療の効率性を評価しやすくなった点も大きな変化です。

一方で、忘れてはならない前提があります。DPCデータが確定するのは「退院後」であるということです。

つまり、DPCデータを用いた分析も、基本的には過去の実績を振り返るためのものです。過去を分析し、そこから学びを得て今後に活かす。この時間軸はレセプトデータ中心で分析していた時代と本質的には変わっていません。

いま必要なのは「明日からどう動くか」の意思決定

では、「今この瞬間」の経営判断に対してはどうでしょうか。経営判断とは、現状を正確に把握し、過去の実績から仮説を立て、その仮説を検証しながら将来を見通すプロセスです。

月の途中で「今月は予算収益に届かないかもしれない」「このペースでは年間の救急車受け入れ台数3,000件を達成できないかもしれない」と分かったとき、求められるのは「では、明日からどうするか」という具体的な意思決定です。

新入院患者を1日あたり何人受け入れる必要があるのか、そのために退院調整をどう進めるのか。こうした具体策を講じるためには、「今どうなっているのか」「このままいくとどうなるのか」を正確に把握していなければなりません。もし、そのためのデータ整理に数日かかってしまえば、その時点でデータはすでに「過去」になってしまいます。

迅速かつ合理的な意思決定に必要な日次データ

「今日までの収益予測はどうか」「月末までにあと何件、手術をする必要があるのか」「明日の外来で逆紹介を提案できる患者は誰か」「明日、退院可能な入院患者は何人いるのか」

現場で業務を担っている職員は、自分たちの業務の状況をある程度把握しています。現場から情報を集めれば、「今」を知ること自体は不可能ではありません。経営判断に求められるのは、聞き取り情報と経験や勘による予測に、信頼できるデータという裏付けを加えることです。

迅速かつ合理的な意思決定、すなわちEBM(Evidence-Based Management)を実践するためには、過去のデータだけでなく、今の動きを把握できる「日次データ」を活用する仕組みが不可欠なのです。

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〈著者紹介〉
コラム著者「石井 富美」氏の写真

石井 富美

多摩大学大学院 客員教授
ヘルスケアビジネス経営人材育成研究所 所長
東京理科大学理学部卒
多摩大学大学院経営情報学専攻科修了経営情報学修士(MBA)

IT企業でのソフトウェア開発経験を活かし、多くの医療機関経営に携わった。社会人大学院で地域医療経営の講座を持ちつつ、地域包括ケアのまちづくりアドバイザー、医療介護事業の経営サポート、医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行っている。

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