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医療現場のDXを加速!
データ活用基盤の構築で失敗しないための3つの鉄則

2026年度診療報酬改定では、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速やデジタル活用による業務効率化は避けて通れないテーマとなりました。しかし多くの病院で「システムを入れたのに現場の負担が減らない」「データが活用できない」という課題に直面しています。その原因は導入したシステムそのものではなく、「データ活用基盤の設計」にあります。今回は、医療現場のDXを形骸化させず、限られた人材で成果を出すために押さえるべき「3つの鉄則」をご紹介します。

2026年度診療報酬改定では、医療DXを加速する項目が増えました。情報共有、データ連携に関わる加算はもちろん、ICT導入による人員要件緩和など、「デジタル活用を前提とした医療提供体制」への移行をさらに進めていく必要があります。

少子高齢化による人材不足が深刻化する中で、「人を増やして対応する」のではなく、 「限られた人材で、どう安全かつ効率的に運営するか」が重要なテーマになり、業務効率化や情報共有を支える基盤として、ICT活用の重要性がさらに高まっています。

その一方で、現場からはこんな声も聞こえてきます。

「システムは増えたのに、なぜか楽にならない」
「データはあるはずなのに活用できていない」
「結局、最後は人が手でつないでいる」

デジタル化による業務改善、医療DXがうまく進まないケースの多くは、システム導入そのものではなく、「データ活用基盤の設計」に課題があります。

「システム」は単体では完成しません。どれほど高機能なシステムでも、データの流れや運用設計が整理されていなければ、本来の機能を十分に発揮することはできないのです。

そこで、医療現場でDXを進める際、データ活用基盤を構築する上で押さえておきたい「3つの鉄則」を整理してみたいと思います。

鉄則① 「ツールを増やす」のではなく「仕組みをつなぐ」

DXが停滞する医療機関では、「部門ごと最適化」が起きていることが少なくありません。看護部は看護部、各部門は各部門で独自にシステムを管理している、事務部門はWordやExcelで管理しているという状態だと、結果として、院内に「データのサイロ化(※)」が起きてしまいます。

すると、情報が連携されないため、スタッフが同じ内容を何度も入力することになります。本来であれば一元管理されるべき情報が分散し、現場では“転記作業”が増えていく。つまり、システムが業務を減らすどころか、新たな業務を生み出してしまうのです。

本当に必要なのは、「情報の流れ」を設計することです。データがどこで発生し、どこに流れ、誰が利用し、どう意思決定につながるのか。その全体像を設計しなければ、部分最適の積み重ねになってしまいます。ここが、医療DXの第一歩です。

※サイロ化=企業などの組織で情報の連携・情報共有が断絶し、孤立する状態。家畜の飼料を保存する「貯蔵塔(サイロ)」に由来する

鉄則② 「属人的運用」に依存しない

医療現場には、「この人しか分からない」「あの人がいないと回らない」という業務が少なくありません。例えば、特定の職員だけが理解しているExcelファイル、担当者ごとに異なる入力ルール、口頭やメモで引き継がれる「暗黙知」。こうしたことは、医療機関では日常的に見られます。また、システム間連携が不十分なため、電子カルテに登録されている情報を、別のシステムへ再入力しているケースも少なくありません。

一見すると運用でカバーできているように見えますが、本質的には「人が補完しないと成立しない構造」になっています。

こうした 「属人的運用」は、担当者の異動や退職、休職によって一気に業務停止リスクへと変貌します。また、入力方法や運用ルールが統一されていないため、データ品質のばらつきも発生しやすくなります。データ活用基盤で重要なのは、「誰がやっても同じ品質で運用できる状態」を作ることです。具体的には、入力ルールの標準化、データ連携の自動化、運用フローの見える化です。

つまり、「人に覚えさせる」のではなく、「仕組みに覚えさせる」という発想です。属人的な業務構造を見直し、組織として再現性のある運用へ変えていくことが重要です。

鉄則③ 「データを集める」のではなく「意思決定につなげる」

医療機関には「病床稼働率」「平均在院日数」「紹介率」「加算取得率」など多くのデータがあります。しかし、数字が存在するだけでは意味がありません。重要なのは、「そのデータで、何を判断するのか」です。そこで重要なポイントは「Garbage In, Garbage Out(入力するデータがダメなら、出てくる結果もダメになる)」です。

入力が曖昧であれば、分析結果も曖昧になってしまいます。だからこそ、データ活用基盤では、「入力」から「可視化」、さらに「意思決定」までを一つの流れとして設計する必要があります。

DXのゴールは電子化ではありません。データをもとに、現場が「動ける状態」を作ること。
そして、組織全体で判断できる仕組みに再設計していくことなのだと思います。

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〈著者紹介〉
コラム著者「石井 富美」氏の写真

石井 富美

多摩大学大学院 客員教授
ヘルスケアビジネス経営人材育成研究所 所長
東京理科大学理学部卒
多摩大学大学院経営情報学専攻科修了経営情報学修士(MBA)

IT企業でのソフトウェア開発経験を活かし、多くの医療機関経営に携わった。社会人大学院で地域医療経営の講座を持ちつつ、地域包括ケアのまちづくりアドバイザー、医療介護事業の経営サポート、医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行っている。

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