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AI時代に求められる、
病院幹部の「データリテラシー」とは

近年、医療分野においてもAI(人工知能)の活用が急速に進んでいます。「病床稼働率」や「平均在院日数」「診療科別収支」といった経営指標は自動で集計され、AIが分析結果や改善提案まで示す時代になりました。

かつて病院幹部に求められたのは「データを集める力」でした。しかし今、求められているのは「データを活かす力」です。AIが分析を担う時代において、病院幹部に必要なデータリテラシーとは何でしょうか。

AIは膨大なデータを処理し、人間では見つけにくい傾向や相関関係を発見することを得意としています。そのため、これまで手作業で集計していた「経営判断に必要な情報」が、リアルタイムで可視化されるようになり、
「外来患者数が前年同月比で減少しています」
「消化器外科の手術件数低下が収益悪化の主な要因です」
「内科の紹介患者数の減少傾向が見られます」
といった分析コメントまで自動的に提示されるようになってきました。

ここで重要なのは、分析結果を理解することではなく、その分析結果を踏まえて何を選択するかです。つまり「AIは分析できても経営判断はできない」ということです。

例えば、AIが「消化器外科の手術件数低下が収益悪化の主な要因です」と分析したとします。確かに手術件数の減少と収益低下には相関があるのかもしれません。しかし、その結果だけを見て手術件数の増加施策を打てばいいのでしょうか。

もしかすると背景には医師の退職があるかもしれません。地域の人口減少が影響しているかもしれません。あるいは病院として急性期機能の縮小を進めている最中かもしれません。同じデータであっても、病院の状況や将来の方向性によって取るべき対応は変わります。

AIはデータから傾向を示すことはできます。しかし、教えてくれるのはあくまで「何が起きているか」です。その病院が地域の中で果たすべき役割や経営理念、将来的に病院が目指している姿に照らして「判断」することはできません。

今後の地域医療構想の中で自院がどの機能の医療を提供するのか。限られた人材をどこに投入するのか。何を守り、何を変えるのか。こうした経営判断は、数字だけでは導き出せないからです。

だからこそ、AI時代の病院幹部に求められるデータリテラシーとは、分析結果を理解する力ではなく、その分析結果を踏まえて意思決定する力なのです。

AIが答えを示す時代だからこそ、病院幹部には「答えを選ぶ力」が求められています。

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〈著者紹介〉
コラム著者「石井 富美」氏の写真

石井 富美

多摩大学大学院 客員教授
ヘルスケアビジネス経営人材育成研究所 所長
東京理科大学理学部卒
多摩大学大学院経営情報学専攻科修了経営情報学修士(MBA)

IT企業でのソフトウェア開発経験を活かし、多くの医療機関経営に携わった。社会人大学院で地域医療経営の講座を持ちつつ、地域包括ケアのまちづくりアドバイザー、医療介護事業の経営サポート、医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行っている。

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