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標的治療薬とメトトレキサート治療下の高齢関節リウマチ患者における入院感染リスクは増加しない:レトロスペクティブ・コホート研究RWD × 医学論文解説

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論文紹介

免疫抑制的に働く生物学的製剤(bDMARDs)等により長期治療を受ける高齢関節リウマチ患者において感染リスクは臨床上注意すべき重要な懸念事項とされている。本報告は、MDVのデータを用い、標準治療とbDMARDs等の分子標的薬治療患者における入院時の感染発症率について年齢層別に検討したものである。

標的治療薬とメトトレキサート治療下の高齢関節リウマチ患者における入院感染リスクは増加しない:レトロスペクティブ・コホート研究

Ryoko Sakai, Eiichi Tanaka, Masako Majima & Masayoshi Harigai

題名Unincreased risk of hospitalized infection under targeted therapies versus methotrexate in elderly patients with rheumatoid arthritis: a retrospective cohort study
著者Ryoko Sakai, Eiichi Tanaka, Masako Majima & Masayoshi Harigai
出典Arthritis Research & Therapy
領域関節リウマチ

Unincreased risk of hospitalized infection under targeted therapies versus methotrexate in elderly patients with rheumatoid arthritis: a retrospective cohort study – PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35689250/

背景

高齢の関節リウマチ(RA)治療において、感染症は主要な懸念事項の1つである。しかし、高齢者において疾患修飾性抗リウマチ薬の生物学的製剤(bDMARDs)やヤヌスキナーゼ阻害剤(JAKI)を含む標的治療(TT)を受けているRA患者の感染リスクに関する情報は乏しいのが現状である。本研究の目的は、若年、准高齢、および高齢のRA患者において、TT療法とメトトレキサート(MTX)療法の入院時感染(HI)リスクを比較することであった。

方法

日本の保険請求データを用い、以下の基準を満たす患者を登録した:(1)RAのICD10コードが1つ以上、(2)2008年4月から2018年9月の間にMTXまたはTT(bDMARDsおよびJAKI)の処方が1つ以上、(3)16歳以上。若年群、准高齢群、高齢群(それぞれ16~64歳、65~74歳、≧75歳)における100患者年当たりのHI発症率(IR)、HIのIR比(TT vs. MTX)を算出した。ロジスティック回帰モデルを用いて、各年齢群におけるHIと治療薬(TT、MTX)の関連を推定した。

結果

100患者年当たりのHIのIR(95%信頼区間)は、若年群、准高齢群、高齢群でそれぞれ3.2[2.9-3.5]、5.0[4.6-5.4]、10.1[9.5-10.9]であった。TTとMTXまたは免疫抑制性DMARDsの併用は、准高齢者群、高齢者群で頻度が低かった。HIに対するTTとMTXの調整オッズ比は、若年群では1.3(1.0-1.7;p=0.021)、準高齢群では0.79(0.61-1.0;p=0.084)、高齢群では0.73(0.56-0.94;p=0.015)であった。

結論

HIのIRは年齢とともに増加した。また、患者特性や併用療法を調整した結果、MTXと比較したTTのHIリスクは、準高齢者、高齢者において上昇することはなかった。


前田 玲

日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
外資系製薬会社にて20年以上医薬品安全性監視関連業務(RMP、使用成績調査等)に従事してきた。また業界活動を通して薬機法、RMP、GPSP、データベース・アウトカムバリデーション関連の通知類に対してコメントしてきた。現在、MDV社等の顧問として医薬品の安全性管理の観点より助言している。

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