コラム

2022年度診療報酬改定 斜め読み!製薬会社さま向け 改定トピックス #010

ヘッダー画像

当社の田中賢悟が、2022年度診療報酬改定の内容を病院関係者さまの目線により近づけて分析、製薬会社の現場担当者さまが取引先さまと情報共有する場面でお役立ていただけるよう分かりやすく解説しています。なお、記載内容は個人の見解に基づくものであり、個人が所属する組織の公式見解ではありません。 

Ⅰ 後発医薬品使用体制加算とバイオ後続品使用促進

「病院経営を帆船に例えたら、風に乗ると簡単に向きは変えられない」

 2002年度診療報酬改定で後発医薬品の使用に言及した診療報酬点数が導入されてからはや20年、目標達成のため厚生労働省はさらなる秘策を出すこととなった。

 この後発医薬品使用体制加算については、導入当初遅々として進まなかった後発医薬品使用割合(初期は後発品採用品目数)が14年度診療報酬改定で数量シェアの考え方が導入されると併せ、DPC/PDPS (診断群分類別包括支払い制度)の機能評価係数に導入されることが決定されてから、病院、特にDPC病院は診療報酬増点という政策誘導として、後発医薬品採用の推進(病院同士でひとつの財源を分配する機能評価係数Ⅱで導入、18年に基礎点数をかさ上げする機能評価係数Ⅰに変更)に貢献してきた。
 それでもなお、17年度時点で目標値として設定した20年9月に使用割合平均80%の壁を超えることができず、21年7月、中央社会保険医療協議会(中医協)はバイオ後発品の使用に際しインセンティブを付け、さらなる後発品使用促進を進めた。22年度改定では「外来化学療法」にバイオ後発品を使用した場合、150点を加算できるようにした。

「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定)(抄) 医療機関、薬局における後発医薬品の使用・調合割合

※中医協総会 令和3年12月8日 中医協 総―4-1より

 後発医薬品使用体制加算は医療機関にとっては、後発医薬品の使用割合を高めることだけで診療行為に加算がされるという、まさしく真水の収益増である(20年度改定で全入院患者に入院料初日の加算47点~、またはDPC機能評価係数0.0014~、外来は処方料に加算5点~などとなった)。薬価差益を考えなくとも、後発医薬品の使用割合を増やすことで純利益が確保することができれば、経営者としても安定財源になると考えるのは自然だ。

 ただ、厚労省としては後発医薬品の使用割合を高めることが元々の目的である。これまでの制度改定で、後発品の使用割合を高い位置で維持することが一つの病院経営目標となったところで、22年度改定では4度目となる使用割合しきい値の底上げをすることとなった。
 一方向に進みだした帆船は一度、風に乗るとそう簡単には向きは変えられない。順風を受け続けるか、それとも逆帆をくらうのか、取るべき手段は明らかである。

参考:厚生労働省令和3年12月18日中医協総会 個別事項(その8)

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000863578.pdf

Ⅱ 認定看護師、特定行為研修とがん治療

「注目集める“外来腫瘍化学療法診療料”」

 22年度診療報酬改定では、タスク・シフティング/タスク・シェアリングという題目のもと、専門の教育を受けた看護師の臨床の現場においての存在にようやく日の目をみることとなった。

 専門性の高い看護師を養成する目的で1995年に認定看護師制度が発足し、2015年10年に改正保助看法(保健師助産師看護師法)が施行、看護師が実施可能な特定行為に対する研修制度(特定行為研修)が始まった。20年度には日本看護協会の認定看護師教育の中に特定行為研修が含まれることとなった。
 一方で、これまでの認定看護師については、診療報酬の施設基準中では「○○ケアに係る専門の研修を受けた」と記載されるにとどまっていたが、22年度改定では「特定行為研修者の活用の推進」と銘打ちチーム医療に係る加算を算定する施設基準に特定行為研修の修了者がいることを求めている。

特定行為研修修了者の活用に係る課題(小括)

 こういった流れのなか、認定看護師制度の先駆けとして養成されてきた「がん化学療法看護」を「がん薬物療法看護」とし、あらたな活躍の舞台がつくりだされることとなった。
 それが「外来腫瘍化学療法診療料」である。
 従来からある「外来化学療法加算」については、これまでの経緯から看護師や薬剤師、管理栄養士などのコメディカルの役割がクローズアップされ、22年度改定では、中医協の議論の中で重点課題として取り上げられた。

外来化学療法の評価のイメージ

※中医協総会 令和3年10月22日 中医協 総―1より

外来化学療法加算1算定件数の推移(当社しらべ)

外来化学療法加算1算定件数の推移(当社しらべ)

答申では、薬剤師や管理栄養士が関わることによる加算点数が目を引くところであるが、外来化学療法の実施に当たっては直接、患者と相対し治療を受ける患者のそばに常に寄り添う「がん専門看護師」の役割がますます重要視されることは間違いないであろう。

参考:厚生労働省令和3年10月22日中医協総会 個別事項(その2)

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000846288.pdf



厚生労働省令和4年2月9日中医協総会 個別改定項目について

田中賢悟

ユーザサポート部 ユーザネットワークユニット
視能訓練士、介護支援専門員、日本医業経営コンサルタント協会会員
1994年高岡市民病院入職、2007年医事課に異動後、経営管理室兼務。病院経営改善プロジェクトにて、診療行為分析やクリニカルパス改善のほか、病棟再編成を担う。2020年現職、「EVE」「MC」など病院向けソリューションの製品改良の他、「MDV Must」「MDV AP」など新製品企画に携わる。防災士、日本DMATタスク業務調整員など、災害現場の医療活動や地域防災活動の指導者の一面も持つ。

page top