コラム

【DPCデータとは?】活用術・分析方法やレセプトデータとの違いなどを解説#016

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あなたは「DPCデータ」をご存じでしょうか。なんとなく言葉は知っていても、その意味や活用方法まで理解している人は少ないでしょう。

本記事ではそのような人に向けて、

  • 「DPC」やDPCにまつわる用語の解説
  • DPCデータの内容
  • DPCデータの分析方法・活用術

などを徹底解説します。

難解なDPCについて図を用いてわかりやすく解説しますので、すぐに理解し活用できるようになるでしょう。

DPCとは

まずは「DPC」という言葉の意味について解説します。

DPCとは、「Diagnosis Procedure Combination」の略称です。

Diagnosis(診断)と Procedure(治療)の Combination(掛け合わせ)という意味です。

例えるならば、縦軸を診断、横軸を治療内容とした組み合わせの分類をつくるようなイメージで、「診断」「治療内容」に応じて患者さんを分類します。

このDPCは比較的新しい概念で「DPC制度」に基づいています。

DPC制度=DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)は、2003(平成15)年に導入されました。

一定の基準を満たす大規模な病院を対象とした、急性期(すぐに治療が必要な状態)の患者の入院時の診療を包括的に評価する制度のことです。

「包括的」というのは、DPC制度ができる以前の出来高制(診療をすればするだけ発生する仕組みの報酬)ではなく、定額制の報酬制度を取り入れることを意味しています。

本来、医療は患者にとり効率的に、安価で質の高い医療が提供されるべきですが、その理屈が通らない時があります。提供するのも人間です。

そのため出来高制の報酬システム(出来高払い)では、どうしても検査や治療をすればする程、病院の経営としては助かってしまう側面があり、患者ファーストの医療が崩れる場合もあります。

そこでDPC制度を取り入れ「定額」の報酬制度にすることで、医療者としては患者を第一に、コストパフォーマンスを重視して、

  • 患者さんの早期退院
  • できるだけ安価な薬の使用
  • 必要最小限の検査

を目指す医療を実現することができます。

DPCデータとは

そして、前述したDPC対象病院の中で、DPC算定をした結果として生まれるデータを「DPCデータ」と呼びます。

このDPCデータの定義においては、そもそもDPCを扱っていない病院や、診療所のデータは全くの対象外となるため、比較的大きな病院のデータをまとめたものであることが特徴です。

それぞれの患者のDPCデータは「DPCコード」と呼ばれる番号で分類され、まとめられます。

DPCコードについて

DPCコードについて

DPCコードとは、「入院料」を決めるために14桁で構成された番号になります。

1人の患者さんに1つのコードが与えられ、重複はありません。

例えば、「肺炎で入院中に転倒して腕の骨を折った」といった状況など、2つの病気を抱えて入院している場合は、治療費が高い方のコードが選ばれます。

このコードによって分かることは以下です。

まず最初の6桁は「入院中に最も医療資源を投入した病気」を示しており、「基本DPC」と呼ばれます。

それぞれの病気によってコードが決められており、例えば誤嚥性肺炎 (ごえんせいはいえん)で入院した場合は「040081」と表記されます。

この6桁の中で最初の2桁はMDC(主要疾患群)と呼ばれ、簡単に言えば「何科の病気に属するか」ということを示しています。

誤嚥性肺炎の場合は呼吸系の疾患になり、04と表記されます。

7桁目は病態等の分類を表しますが、2006年度以降はこちらの分類はされていません。

8桁目は年齢・出生時の体重・JCS(意識障害の分類)が治療内容に影響する際に記載される場合があります。

9/10桁目は「手術等サブ分類」といって、基本DPCに基づいた、それぞれの疾患に対しての手術に応じて割り振られます。誤嚥性肺炎のように手術が必要ない場合は「99」と表記されます。

11/12桁目は、手術の他の治療(放射線治療・化学療法など)をした場合に割り振られることがあります。

13/14桁目は、入院中に他の病気を併発したり、またはその重症度によって割り振られます。

DPCデータの内容

次に、DPCデータの具体的な内容について解説していきます。

DPCデータは以下のように分類されます。

DPCデータの内容

主要な項目を簡略化してまとめます。

「様式1ファイル」は、入院時の意識状態、生年月日、退院先、病名など、退院する際に医師が患者の入院情報について要約する「退院サマリー」のような、患者の個別情報です。

「様式3ファイル」では、入院基本料など、入院自体にかかった料金といった「診療以外の施設利用費用などの情報」が記載されています。

「様式4ファイル」は「保険診療で発生した報酬以外の支払い」に関する情報です。

「EFファイル」については、入院中に使用した薬の種類と量、または投与した日数等、薬剤に関する情報がまとめられています。

「Dファイル」には検査、薬、注射含め、入院中の診療にかかった点数(料金)がまとめられています。

DPCデータベースの特徴

このようなDPCデータがまとめられて「DPCデータベース」となり、その最大の特徴は「豊富な患者データ」です。

先述したように、入院患者の入院時から退院時の状態、診療行為、使用された薬剤、点数など、様々なデータを確認することができるのがDPCデータの強みです。

「データがDPC病院に限定されること」「基本的に入院中のデータに限定されること」はデメリットともとれますが、逆に大病院での入院が必要なことが多い重症疾患の研究の際などには非常に適したデータと言えるでしょう。

DPC公開データについて

DPCの公開データから分かる情報が多い一方、

  • 手術や麻酔行為
  • 放射線治療
  • リハビリテーション
  • 複雑な検査行為

など「提供側(もしくは医療者)の技量によって成果が変わりうる医療行為」や「治療の結果にバラつきが出てしまう医療行為」は出来高制となるため、DPCデータには含まれません。

そのため、全ての診療行為がDPC公開データに含まれる訳ではありません。

とはいえDPCデータを見ることで、病院が「どういった患者」に「どれだけの診療行為」を提供し、「どれだけの収入を得ているか」については、一定程度確認することができます。

レセプトデータとDPCデータの違い

レセプトデータとDPCデータの違い

次に、レセプトデータとDPCデータの違いについて見ていきましょう。

レセプトデータとは、病院、診療所、調剤薬局などで、患者がどのような病気で受診したか、どのような治療を受けたかという「診療報酬」の明細のデータのことです。

DPCデータとレセプトデータにはいくつか違いがありますが、大きな違いはその「対象範囲」です。

DPCデータはDPC病院に名乗りを上げ、認可を受けた病院のみのデータであるのに対し、レセプトデータは慢性期、地域のクリニック、調剤薬局などを含む、入院内外での全ての保険医療機関のデータが対象になります。

ただし、レセプトデータでは傷病名の序列や患者の郵便番号がないのに対し、DPCデータではそういった項目が含まれるため、より詳細な情報がある点が強みとなっています。

医療機関別係数とは

DPC制度による収入は病院によって異なり、それには「医療機関別係数」が関係します。

つまり、同じAという病気に同じBという検査をしたとしても、病院によって値段が違ってきます。

この「医療機関別係数」は、大きく3つに分けられます。

①基礎係数

1つ目は「基礎係数」です。

こちらは非常にシンプルで、病院自体のランクに応じて変化するもので、

大学病院本院>DPC指定病院>DPC非指定病院

の順にランク付けされています。

②機能評価係数Ⅰ

次は「機能評価係数Ⅰ」です。

こちらは「勤務体制」によって変化する係数で、

  • 看護師がどれだけ配置されているか
  • 夜勤が多く、長くなっていないか
  • 医師の作業を補助する人員が確保できているか
  • 医療安全の対策、感染対策などができているか

によって変動します。

しっかりと人員を確保したり、トラブルを想定した対策をしたりすることで安全に医療を提供する体制が整っている医療機関が評価されます。

③機能評価係数Ⅱ

最後が「機能評価係数Ⅱ」です。

こちらは「病院がどれだけ質の高い医療を提供できているか」によって変化する係数で、

  • レセプトの提出時にどれだけミスが少ないか
  • しっかり効率性を重視し、患者さんを早期退院させられているか
  • 専門性の高い、難易度の高い手術をしているか
  • 救急医療や地域医療にしっかり取り組んでいるか

によって変動します。

この3つの要素によって、病院の収入は影響を受ける構造になっています。

DPCデータの分析方法・活用術

最後に、DPCデータの分析方法・活用術について解説します。

まず、病院側の立場で考えれば、毎年のDPCデータを比較することで経営改善に役立てることができますし、診療自体の質の向上にもつながります。

DPCデータベースのおかげで、収益を上げるという目的に対しても、いたずらに検査を増やすことなく、質の高い医療を目指すことが収益アップにもつながる構造になっています。

そして制度を作る側にとっても、どの病院が、どの程度の質の医療を提供していて、どのくらいの収入を得ているのかを全体として俯瞰することができるので、医療体制をよりよくするために非常に参考になるデータです。

対象こそ限定されるものの、レセプトデータ以上に内容の濃いデータベースになっているので、有効に扱うことでより良い医療の実現が期待できるでしょう。

弊社メディカル・データ・ビジョンは【診療データベース分析を圧倒的に効率化させるツール】【特定診療データの調査分析】などを提供していて、医療・製薬業界はじめ多くの企業様にご活用いただいております。

現在、全国DPC対象病院(1,761)のうち、28%ほどのカバー率となります。(2023年12月1日時点)

今回紹介したDPCデータの中でも、様式1ファイル(カルテのサマリーのような情報)の入退院情報の中から、患者の身長・体重や、癌の進行度や心臓の機能、肝臓の機能がどの程度落ちているかの分類など、重症度を確認できるデータ項目を管理しています。

弊社のツールや調査分析は、様々なシーンでご活用いただいておりますので、DPCデータに関するいくつかの活用例をご紹介させてください。

例えば、DPCデータのEFデータ(薬剤に関する情報)の部分をチェックすることで、DPC病院での薬剤の使用されている種類・量を把握することができます。

そのため、製薬企業様であれば、疾患に対してどんな種類の薬剤がどれだけ使用されているかなど、市場調査のために有効活用できます。

また、学術研究機関様の場合、DPC病院に入院している特定の疾患の重症患者の大規模な統計情報を活用することで、臨床研究に大いに役立てることができます。

行政への報告が必要な場合には、DPCの患者情報の部分を参照することで、質の高い統計資料を作成できます。

このように、弊社をご活用いただいた事例は多数ございますので、医療ビッグデータのビジネスへの利活用を検討されている場合には、ぜひ一度ご相談ください。

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