解説:医療情報データベースを承認申請、再審査等申請に利用する場合の信頼性担保Q&A 特別編 #023
2022.10.11
2024.05.10
厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課から表題のQ&Aが9月14日、事務連絡として発出されました。信頼性に関するQ&Aは2019(令和元)年6月19日に出されていましたが、これを廃止したうえで、Q&Aの対象をレジストリ及び医療情報データベースであることを明確にしました。この背景には、製造販売後データベース調査の相談事例等が蓄積したことがあります。そのため、Q&Aの一部を見直して取りまとめています。本Q&Aの位置づけ、出された変更点のポイント及び、変更されなかったポイントについて簡単に解説します。
①レジストリと医療情報データベースの信頼性Q&Aとして発出された
本Q&Aは、ほとんどの項目がレジストリと医療情報データベースとを合わせて説明していることから、基本的には確認すべき信頼性の項目や基準は同じということになります。この場合、疾患レジストリは作成する目的や作成した組織はさまざまであるため、本Q&Aに対応できるかについてレジストリの運営側にしっかり確認する必要があります。
②変更された点
最初に、変更した点で重要なのは、元データの考え方、データの取り込み方法を確認するための留意点を示したことです。医療情報データベースの信頼性を議論するに当たり医療情報データベースの元データの定義について様々な見解がありました。本Q&Aでは健康保険組合レセプトデータ及びDPCについて、医薬品医療機器総合機構(以下 PMDA)から請求データを元データとする認識を示し(Q20)、電子カルテからレセプトデータ、あるいはDPCの出力システムに関するコンピュータシステムバリデーションの記録を確認することが不要となりました(Q23)。
次に重要な点は、レジストリ固有のQ&Aを追加したことです。レジストリについてほとんどの項目で医療情報データベースと共有の項目として記載されていますが、一部レジストリ固有のQ&Aも示しています。レジストリの研究計画書等で収集することを規定していないデータを追加する場合にDB事業者に確認する事項(Q13)、医師以外の医療従事者等が入力した場合の留意点(Q14)、同意に関する確認(Q15)、規制当局の適合性調査(Q16)を示しています。
③変更していない点で留意すべきQ&A
一方、それ以外で変更していないQ&Aの中で、留意すべき点は臨床検査データに関する信頼性です(Q25)。ここでは臨床検査のデータをコード化するにあたり、分析物の情報だけでなく、検体検査の材料、測定法の情報も把握する必要があると示しています。この説明は前回のQ&Aから変更していませんので、臨床検査データを利用する場合には、臨床検査項目ごとにデータベース事業者から状況を入手し、PMDAの確認を取る必要があります。
以上、主な変更点の説明をしました。それ以外の変更点についてはより具体的な事例についての説明や、従来の回答に補足説明を追加しています。実際に製造販売後データベース調査を検討する際には、医療情報データベースの信頼性通知、レジストリの信頼性通知、及び本Q&Aを確認してください。
医薬品の製造販売後データベース調査における信頼性担保に関する留意点について2018(平成30)年2月21日
https://www.pmda.go.jp/files/000223003.pdf
「レジストリデータを承認申請等に利用する場合の信頼性担保のための留意点」について2012(令和3)年3月23 日
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210324I0020.pdf
レジストリ又は医療情報データベースのデータを医薬品の承認申請、再審査等申請に利用する場合の信頼性担保に係る留意点に関する質疑応答集(Q&A)について 2022(令和4)年9月14日