コラム

何故データ利活用が必要なのか?Clinical Trial+ 第1回

ヘッダー画像

当コラムを担当いたします臨床試験事業部小川武則と申します。個人的な意見なども交えて発信をしていきたいと思いますので、ぜひ、お付き合いください。

第1回は、「なぜデータ利活用が必要なのか?」を少し考えてみたいと思います。

現在、国内にはさまざまな医療に関するデータが存在しています。しかし、その存在が明らかになってきたのは、15年前ぐらいからではないでしょうか。

もちろん、医療に関するデータはもっと古くから存在していましたが、単に存在するだけでは誰の興味も引かず、話題にも上がりませんでした。

近年なぜ、医療に関するデータの存在がクローズアップされてきたのでしょうか?
答えは簡単です。さまざまな人々が医療に関するデータを利活用したいと考え、かつ、利活用の事例が世の中に出てきたからです。

その頃から、医療ビッグデータやリアルワールドデータ(RWD)などの言葉をよく耳にするようになりました。話が少し脱線しますが、このRWDは、近年新しく出てきたデータではなく、私が大学卒業後に企業に就職し、コンピュータ関連部署に配属された際に、製薬企業のデータ処理プログラムを作成していた時代から扱っていたデータです。

話を本題に戻します。
近年、医療に関するデータの利活用はマーケティングやセールスにおいて、その存在価値が高まっていき、同時にさまざま医療に関するデータベースが現れて、ますます利活用の機運が高まってきたと記憶しています。

そんな中、2018年4月1日に改正GPSP省令が施行され、製造販売後データベース調査が新しい調査区分として追加されます。これにより、薬事に関する申請に医療に関するデータの利活用が認められることとなりました。

今回は、実際の臨床現場で得られるRWDを産業界が利用する場面について、医薬品開発(医療機器や再生医療を含む)に限定して考えていきます。定性的効果と定量的効果についてそれぞれ考えていきましょう。

医薬品開発にデータ(RWD)を利活用

まず、定性的効果について考えます。治験・臨床研究領域においてデータを利活用することで得られる効果の一つは、治験・臨床研究に参加する被験者の組み入れ数を減らすことができることです。このことは、もちろん定量的効果にも影響しますが、被験者にかかる負担を軽減することができます。被験者は、試験内容に応じてさまざまな検査や採血、通院や移動、時間拘束、そして仕事の調整や精神的ストレスを強いられることがあります。データを利活用することで、これらの負担を軽減することができます。

次に、定量的効果について考えます。さまざまな場面で期待できる効果があります。
例えば定量的効果が見込める可能性として

  • 組み入れ被験者数軽減
  • 治験臨床研究期間の短縮
  • 実施施設数削減

などが挙げられます。
ただし、定量的効果については、場面によっては効果がある場合もあれば、逆に効果がない場合もあることを覚えておく必要があります。

次回は、さまざまな場面を想定して、定量的効果を理論的に考えていきたいと思います。

小川 武則

臨床試験事業部
一般社団法人日本CRO協会 参与
1986年、株式会社社会調査研究所(現株式会社インテージ)入社、コンピュータ事業部に配属され製薬企業の情報処理に携わる。2005年、当時100%子会社であった株式会社アスクレップの代表取締役社長に就任し、開発関連業務をスタート。同時に日本CRO協会にて業界活動を開始、協会理事として2009年には政策委員会を立ち上げ初代委員長に就く。2020年、メディカル・データ・ビジョン株式会社へ入社し、治験・臨床研究領域における医療データ活用を推進。

page top