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医療データベース研究とは?研究の流れや注意点を解説#042

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医療機関が患者から収集するあらゆる情報は、医療ビッグデータとして注目されています。近年はこのビッグデータをデータベース化した「医療データベース」の活用が進んでおり、新薬開発や医薬品などの安全評価で役立てられているのです。本記事では医療データベースを使った研究やその目的、さらには医療データベースを使った研究の流れをご紹介していきます。

データベース研究とは

医療データベース研究とは、医療データベースを活用した研究のことです。欧米では患者の協力を得て集められた医療データベースを解析し、医薬品などのリスクを見つけ出す調査が発展しています。

ここで言う医療データベースとは、さまざまな医療機関から集められたビッグデータの統合データベースです。データは、「電子カルテ」「オーダリング」「レセプト」などから引用されており、患者の主病名、合併症名、性別、年齢のほか、初診日、診療日、主な既往歴なども網羅されています。

医療データベースは多くの症例を必要とする研究機関などに二次利用され、より安心・安全な医療の実現に貢献しています。

代表的な医療データベースとしては、以下のとおりです。

  • NDB(ナショナルデータベース):厚生労働省が提供する医療データベース
  • MID-NET:全国23の大病院のデータを集めた医療データベース
  • JADER:有害事象自発報告医療データベース
  • 民間営利企業・教育研究機関が運営する医療データベース

日本のデータベース研究

日本では、医療データベース調査・研究を支援するためのベースとなる基盤が確立されていません。医療データベースを使った研究分野では、医療データベース利用体制構築の遅れを回復するのが急務とされてきました。

しかし近年は、電子カルテの普及によってデータを活用しやすくなった上、保険診療の全レセプトデータおよび特定健康診査によるデータベースの構築も実施されています。医療データベースを研究機関などに提供する規定の整備は進んでおり、医療データベースを活用した研究について今後が期待されています。

データベース研究の目的

医療データベースは、臨床疫学・薬剤疫学といった研究のエビデンスとして使われます。これまでの研究では、ひとつの研究のために単発でデータを収集するやり方が基本でした。論文を数本書けば集めたデータは用済みとなり、非常に非効率です。

医療系のビッグデータをまとめた医療データベースを活用すれば、いつでもエビデンスの基となる有益なデータを抽出できます。例えばレセプトデータは、記述疫学や分析疫学などの研究に利用可能です。

医療データベースが活用されるシーンとしては、以下のようなものがあります。

  • 新薬の開発
  • 新薬発売後の調査
  • 病院運営における診療効果の数値化
  • 希少疾患・難病関連の情報共有 など

データベース研究の流れ

データベース研究の流れ

医療データベース研究は、次のような流れで行なわれます。

  • 研究計画
  • データベースの選定
  • 抽出条件の検討
  • 調査・解析
  • 解析結果の作成

計画から解析結果作成までの流れを簡単にご紹介します。

研究計画

まずは「医療データベース研究をどのように進めていくか」を決めなければなりません。事前調査や文献調査をしっかりとやり、追加調査の必要性の有無やリサーチクエスチョンを検討します。

データベースの選定

データベースは、リサーチクエスチョンにマッチしていることが必要です。可能な限り対面で打ち合わせをして、イメージの食い違いを防ぎます。

またひとつの研究に必要なデータベースは、ひとつとは限りません。場合によっては、ひとつの研究で複数のデータベースを扱うこともあります。

抽出条件の検討

選定した医療データベースから、どのような条件で必要な情報を抽出するかを決めます。例えば次のような条件を抽出条件として設けます。

  • 主病名
  • 合併症名
  • 性別
  • 年齢
  • 初診日

抽出のアルゴリズムが決まったら、妥当性や実際に抽出し得る症例数などもチェックしなければなりません。

調査・解析

データの抽出が終わったら、事前に作成した研究計画書や解析計画書に基づき、データの集計や解析をします。自身で集計や解析が難しい場合は、データベースのベンダーに依頼するケースもあります。

解析結果の作成

解析結果をベースに調査書や研究報告書を作成します。有用な研究は社内に留めず論文化することで、公共の利益に貢献可能です。

データベース研究の注意点

医療データベースで信頼性の高い結果を得るためには、いくつかの注意点があります。どのようなことに気を付けるべきなのか、詳細を見ていきましょう。ここからは、医療データベース研究をする際に気を付けたいポイントをご紹介します。

該当分野に関する専門家、統計家をアサインする

医療データベース研究をする際は、専門家と統計家をチームに加えましょう。

優れた医療データベースがあったとしても、データを読みこなす知識がなければ、正確な研究結果は導き出せません。例えば薬剤疫学の医療データベース研究をするなら疫学家と統計家が必要です。

コンサルを依頼する場合は専門性を確認する

データベースベンダーにコンサルを依頼する場合は、医療データベース研究のコンサル実績を確認しましょう。

データベースベンダーのすべてが、医療データベース研究に必要な知識や経験を備えているとは限りません。チームの専門家・統計家にデータベースベンダーの専門性を検証してもらい、適性を測ってください。

目的を達成できるデータベースであることを確認する

医療データベースにはさまざまな種類があり、それぞれ特性が異なります。医療データベースを選定する際は「リサーチクエスチョンとマッチしているかどうか」の確認が必要です。

リサーチクエスチョンと医療データベースがアンマッチだと、正しい結果を導き出せません。実際に研究を始める前に、実現可能性を確認しておくことが必要です。

データベース研究は診療行為や新薬開発に生かせる

医療データベース研究は、さまざまな機関から収集された医学・医療データを活用した研究です。多量の情報から必要なエビデンスを抽出できるとして、臨床疫学や薬剤疫学などで活用されています。医療データベースは今後ますます、学術研究、研究開発の発展などに欠かせないものとなるでしょう。

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