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コラム

医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)とは?概要や考え方、目的について解説 #068

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近年、日本国内の医療分野で医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)の重要性に注目が集まっています。米国では既に確立された研究分野ですが、日本ではまだなじみが浅く、医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)とはどのようなものか、何を目的に行われるのか分からない方が多いかもしれません。

本記事では、医療経済アウトカムリサーチ(HEOR)の概要と基本的な考え方や、実施目的を解説します。あわせて医療技術評価や費用対効果評価制度についても説明します。


医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)とは

医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)とは、疾患治療がもたらす経済への影響や、治療を受けた患者が社会に及ぼす影響を統計的に分析したものです。英語では、Health Economic and Outcomes Researchといい、頭文字を取ったHEORが略称として用いられています。

医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)は、医療技術が健康改善に及ぼす影響と価値を評価する医療技術評価(Health Technology Assessment:HTA)の指標の一つで、エビデンスに基づく治療やケアを、いかに効率よく患者に届けるかを模索することを主な目的としています。

医療技術評価とは

医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)を指標の一つとする医療技術評価は、医薬品や医療機器といった医療技術を対象に、医学的・社会的・経済的・倫理的な問題を整理し、意思決定に反映させるプロセスのことです。

現代の医療技術は日々進歩しており、新たな治療法や医薬品・医療機器の開発が、患者の寿命の延伸やQOLの向上に大きく寄与しています。

一方で、医療技術の開発や進歩には多大な費用がかかり、医療財政のひっ迫につながることが懸念されています。医療技術評価を実施すると、個別の医療技術から得られる効果とそこにかかる費用を分析でき、適切な治療の決定など、医療における意思決定に役立てることが可能です。

費用対効果評価制度について

日本では、医療技術評価や医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)の一環として、2019年4月より費用対効果評価制度の運用を開始しました。同制度は、医薬品や医薬機器の費用対効果を価格に反映させることを目的としたもので、対象となる医薬品・医薬機器に価格に見合った効果があるかどうかを評価します。

同制度によって費用対効果が低いとみなされた医薬品および医薬機器は価格が引き下げられます。

これまで、医療分野の進歩とともにさまざまな薬剤が開発されてきましたが、中には高額なものも少なくありません。日本では国民皆保険制度を導入しているため、高額な薬剤が流通すると公的医療保険の財政がひっ迫する危険性があります。

同制度の導入によって医薬品および医薬機器が効果に見合った価格で流通されることで、公的医療保険の財政への影響を抑えることが可能です。

ここでは費用対効果評価制度の選定基準と評価方法、評価プロセスについて説明します。

選定基準

費用対効果評価は、市場に流通している医薬品・医療機器の全てを対象とするものではありません。医療保険財政への影響を抑えるという目的から、財政への影響度が大きい医薬品・医療機器を主な対象としています。

影響度は基本的に市場規模をもとに判断されますが、制度化以前と以後では選定基準が異なります。制度化以後に収載される品目(新規収載品)については、ピーク時市場規模の予測が50億~100億円以上(区分によって異なる)です。

一方、制度化以前に収載された品目(既収載品)は、市場規模が1,000億円以上のものが選定基準となります。

評価手法

費用対効果制度では、質調整生存年(QALY)を指標に評価します。QALYとはQOL(Quality of life:生活の質)と、生存年をあわせて評価するための指標のことです。完全な健康状態を1、死亡を0として数値化したQOLに、生存年を乗じて算出する仕組みです。QALYの値が高いほど費用対効果は高いとみなされます。

費用対効果制度では、このQALYを1上げるために、既存の医薬品・医療機器に比べて追加でどのくらいのコストがかかるかを評価します。これが増分費用効果比(ICER)です。ICERが、あらかじめ定めた基準に比べて低かった場合、既存の医薬品・医療機器に比べて費用対効果が良いと評価されます。

評価プロセス

費用対効果評価制度では、品目の選定後に企業による分析の後、国立保健医療科学院が主体となり、公的分析が実施されます。公的分析では、事前の企業分析の検証や、再分析などが行われます。

公的分析が終わったら、専門組織によって総合的評価が実施され、その結果に基づき、中医協が評価および医薬品・医薬機器の価格を決定する流れです。

企業分析に9カ月、公的分析に3~6カ月、総合的評価および価格決定に3カ月をそれぞれ要するため、費用対効果評価はおおむね1年3カ月~1年6カ月ほどの期間をかけて行われることになります。

医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)への理解を深めておこう

少子高齢化などの影響により、日本では長らく医療保険財政の赤字が続いています。今後も厳しい財政状況が続くことが予想されている今、医薬品や医療機器の費用対効果を分析する医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)や医療技術評価、費用対効果制度が重要な役目を担うことは間違いないでしょう。

これらは診療情報の集積および集積した情報の分析に基づいており、各種データや情報をいかに効率よく集め、分析するかが大きなポイントです。

メディカル・データ・ビジョン株式会社では、診療情報を集積するデータネットワークサービスと、集めた診療情報を分析して提供するデータ活用サービスを展開しています。日本最大級の質と量を誇る診療データベースを保有しているため、医療経済・アウトカムリサーチ(HEOR)や医療技術評価、費用対効果評価の導入を検討されている場合は、ぜひメディカル・データ・ビジョン株式会社のサービスをご利用ください。

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