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日本における多発性骨髄腫患者の治療パターンと転帰RWD × 医学論文解説

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論文紹介

多発性骨髄腫治療は、近年の新薬の登場により変化してきている。MDVデータを用いて新薬が使用される前後で期間を二つに分けて(2003~2015年、2016~2020年)、多発性骨髄腫患者の治療パターンと転帰を調査した。後半の時期では新薬が使われ治療選択肢が増えていることを示した。新薬の登場、あるいは治療ガイドラインの変更などトレンドから実態を把握することができる。

日本における多発性骨髄腫患者の治療パターンと転帰

Hiroshi Hand, Tadao Ishida, Shuji Ozaki, Asuka Mori, Kenichi Kato, Shinsuke Iida

題名Treatment pattern and clinical outcomes in multiple myeloma patients in Japan using the Medical Data Vision claims database
著者Hiroshi Hand, Tadao Ishida, Shuji Ozaki, Asuka Mori, Kenichi Kato, Shinsuke Iida
出典PLoS One.
領域多発性骨髄腫

PLoS One. 2023 Apr 6;18(4):e0283931. doi: 10.1371/journal.pone.0283931.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0283931

背景

ステロイドは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)に関連する炎症反応を調節するために広く使用されている。しかし、COVID-19の急性期治療におけるステロイド使用の至適上限用量は依然として不明であり、現在入手可能なデータは、このパンデミック時の治療が絶望的な状況であったことから、有効性がない、あるいは因果関係が逆転しているという時間依存性のバイアスに苦しんでいる可能性がある。したがって、本研究の目的は、時間依存性バイアスをコントロールすることにより、COVID-19患者の院内死亡リスクに対するメチルプレドニゾロン静注パルス療法(1日500mg以上)の影響を明らかにすることであった。

方法

多発性骨髄腫治療は、新薬の登場により目覚ましい進歩を遂げている。我々は、Medical Data Visionデータベースを用いて、日本人の多発性骨髄腫患者の治療パターンと転帰を調査した。新薬の採用を考慮し、患者を初診時期(2003~2015年、2016~2020年)ごとに分類し、さらに幹細胞移植の有無に基づいて分類した。

結果

全体で6,438例の患者データが解析対象として抽出され、指標となる診断日の年齢中央値は72.0歳であった。ボルテゾミブ/デキサメタゾンは、2003年から2015年まで幹細胞移植を必要とする患者の導入療法として最も一般的なレジメンであり、2016年から2020年ではボルテゾミブ/レナリドミド/デキサメタゾンの使用が増加した。レナリドミド/デキサメタゾンは幹細胞移植後療法で最もよく使用された。非幹細胞移植群では、いずれの期間もボルテゾミブ/デキサメタゾンが主に使用されたが、2016~2020年はレナリドミド/デキサメタゾンが主に使用された。ファーストラインの治療期間は短くなる傾向にあり、次のラインでは新薬の追加治療パターンに移行していた。入院患者の死亡までの期間は、2つの期間の間で改善が示唆された。

結論

このように、本研究により日本における多発性骨髄腫の臨床では、近年の治療選択肢の多様化が受け入れられ、転帰の改善に寄与していることが明らかになった。


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング 代表
日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家
MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後データベース調査、及び疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画及び、製造販売後データベース調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングを行っている。

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