
高血圧患者における生活習慣病併存と心筋梗塞・脳梗塞発症率の年代別分析
5月17日は「世界高血圧デー」。
この日は、2005年に国際高血圧学会の一部門である世界高血圧リーグ(WHL=World Hypertension League)によって制定され、高血圧に対する認識を高め、その予防と管理の重要性を広く呼びかけるために設けられた国際的な啓発の日である。
高血圧は、初期にはほとんど自覚症状がなく、知らないうちに心臓病や脳卒中などの深刻な疾患を引き起こす「沈黙の病」として知られている。今回、MDVのデータを用いて男女年齢別高血圧症患者数と、高血圧症患者における2型糖尿病および高脂血症を併存する患者数を年代別および心筋梗塞と脳梗塞の発症数を調査した。

データ対象期間:2020年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:360
患者数は加齢とともに増加する傾向があり、特に60代から70代にかけて顕著に増加していることがわかる。
また男女差は、若年層から中年層にかけては男性の患者数が女性を上回っているが、80代以降はその差が縮小し、90歳以上では女性の方が多くなっている。
この背景には、女性の平均寿命が男性より長く、高齢層における女性の人口構成比が高いことが影響していると考えられる。
続いて高血圧症患者における2型糖尿病および高脂血症を併存する患者数を年代別(40代~90歳以上)で調査した。

データ対象期間:2020年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:360
対象疾患:I10:本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)、E11:2型<インスリン非依存性>糖尿病<NIDDM>、E78:リポタンパク<蛋白>代謝障害及びその他の脂血症
すべての年代において、「高血圧症のみ」の患者数が最も多いことが分かった。次いで、「高脂血症との併発」の患者数が多く、特に60代から80代にかけてその傾向が顕著であり、高血圧症患者の多くが高脂血症も併せ持っている実態がうかがえる。また、「高血圧症・2型糖尿病・高脂血症」の3疾患すべてを併発している患者は、70代で最も多いことが明らかとなった。
最後に、高血圧症患者における2型糖尿病および高脂血症を併存している患者について、60代から90歳以上の年代別に、心筋梗塞・脳梗塞・またはその両方を発症している割合の推移を調査した。

データ対象期間:2020年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:360
対象疾患:I10:本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)、E11:2型<インスリン非依存性>糖尿病<NIDDM>、E78:リポタンパク<蛋白>代謝障害及びその他の脂血症、I21:急性心筋梗塞(指定期間内)
「高血圧症・2型糖尿病・高脂血症」の3疾患すべてを併発している患者が、全ての年代で最も発症率が高く、60代では7%以上、90歳以上でも6%以上を維持している。「高血圧症のみ」の群では、年代が上がるにつれ緩やかに発症率が低下し、90歳以上では2.5%を下回っていた。
このグラフから、併存疾患があるほど心筋梗塞リスクが高まる可能性があることがわかった。

データ対象期間:2020年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:360
対象疾患:I10:本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)、E11:2型<インスリン非依存性>糖尿病<NIDDM>、E78:リポタンパク<蛋白>代謝障害及びその他の脂血症、I63:脳梗塞(指定期間内)
年齢の上昇に伴い、全体的な発症率は増加傾向にあり、特に80代以降で急激な上昇が認められた。なかでも「高血圧症・2型糖尿病・高脂血症」の3疾患すべてを併発している患者では、全年代を通じて最も高い発症率を示していた。また、心筋梗塞と比較して、脳梗塞の発症率の方が高い傾向にあることもわかった。

データ対象期間:2020年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:360
対象疾患:I10:本態性(原発性<一次性>)高血圧(症)、E11:2型<インスリン非依存性>糖尿病<NIDDM>、E78:リポタンパク<蛋白>代謝障害及びその他の脂血症、I21:急性心筋梗塞、I63:脳梗塞(指定期間内)
年代が上がるごとに発症率も上昇傾向を示しており、80代で最も高い値を示していた。「高血圧のみ」の群に比べ、「高血圧症・2型糖尿病・高脂血症」の3疾患すべてを併発している患者は倍以上の発症率を記録している。生活習慣病の多重併存が心血管・脳血管系疾患の複合リスクを顕著に高める可能性があることが分かった。
※本記事は2025年5月7日付で公開されたものです。
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