コラム

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「MDVのオープンアライアンス、新たな価値の創造」 MDV Inside 第6回

では今回はMDVのデータビジネスが、オープンアライアンスでこれからどういう方向を目指すのか、このオープンアライアンスに関して大きく動いたポイントは昨年の5月のDeNAさんとのアライアンスからだと思います。このアライアンスによって、病院データベースと保険者データベース共に国内最大規模となり、今後は今までに加えて台帳情報を活用した拡大推計も可能となるため、データの質として上がっていくのかと思います。ここへの期待はいかがでしょう?

中村

ここについては、お客様にとっての満足感や納得性においてどれだけの精度が必要なのかが重要です。まずはお客様のご意見や反応をお聞きしたいと考えています。例えば、「全体でいくらか?」や「全体で何人か?」といった情報に加えて、新たなオプション機能である「ディープダイブ機能」が導入され、詳細なデータ探索が可能になりました。このような新しい価値を感じていただければ、大変嬉しく思います。

次に、現在世界的に注目されているAIに関する方向性についてですが、直近ではマルチモーダルAI(人工知能)を活用したサービス開発に強みを持つエクサウィザーズと業務提携、AI“超聴診器”プロジェクトを推進するAMIと資本業務提携をしました。これにより、「ビッグデータ×AI」というフェーズに突入したと考えられます。ここについてはどのようにお考えですか?

中村

率直に言って、これには非常に期待しています。ただし、具体的な展開についてはこれから検討していく段階です。
エクサウィザーズさんとの提携においては、互いのデータとAIを活用してさまざまな成果を生み出す可能性があるとの確信を持っており、まずはプレスリリースで発表した内容の方向性を検討しています。この領域において、希少疾患や症例要約、生成AIを活用した分析などの可能性に焦点を当てています。
希少疾患については、取り組むテーマに応じて同時進行で進めることも考えていますが、最初に取り組むのは症例要約です。実際に医師のアドバイザリーボードを開催する際、対象疾患のデータを詳細に検討する必要がありますが、これには多くの時間がかかります。
例えば、国内に100人程度しかいない希少疾患の場合、AIがその疾患に関するデータを集約し、医師は事前にその情報を把握した上で、患者情報の確認をする。これにより、アドバイザリーボードにおいて医師が細かいデータを一つひとつ確認する必要が減り、確認漏れのリスクも低減するでしょう。
対象疾患に対して、もし元々、深い知識がなかった場合でも、初めの段階でデータの要約を閲覧できることで、その後の詳細なデータを参照する際の有用な参考情報となり得ると考えています。
この専門性の部分も含め、幅広い方に向けた入り口としても症例要約…もし許されるなら「症例辞書」と名付けたいところですが、そこまで言ってしまっていいのかも含めて名称は検討中です。

現在データーベースサービスについての主なクライアントとして製薬会社やアカデミアなどがあると思いますが、この症例要約については医師に近いサービスと理解しました。販売先についてはどのようにお考えですか?

中村

まだ具体的ではありませんが、学会などは潜在的な販売先として考えられるかもしれません。また、製薬会社の方々が医師に対して説明を行う際にも使えるかもしれないと考えると、既存顧客の利便性向上にも可能性は感じています。
既存顧客に加え新規顧客としての病院や学会、症例検討会なども検討対象としていますが、ここでの新規顧客に関しては、マネタイズの追求というよりも、データベースの潜在的な価値を臨床医師に認識してもらうことは重要な目的の一つだと考えています。
次に生成AIについてですが、例えば「肺癌のリスク因子を分析したい、どのパラメーターが影響しているのか分析したい」という要望があるとします。その場合、MDVデータベースが適切に読み込まれ、データ抽出定義とプログラムがAIで自動的に生成され、結果が得られるという理想を追求しています。ただし、この点については関係各所との確認・協議が必要な内容ですので、今後の検討課題ですね。

それでは続いて「超聴診器」のAMIさんについてですが、先方の代表取締役で医師でもある小川さんと、中村さんはかなり親しくされていると思うのですが、まず超聴診器とどういう形で出会ったのか。その辺をお聞かせください。

中村

最初の出会いは5~6年前のことです。AMIさんが創業したばかりの頃にお会いし、超聴診器のプロトタイプのようなものを見せていただきました。当時のデバイスは、小川さん手造りの工作でした(笑)。しかし、お話を伺ったところ、目指していたことは「聴診を根本から変えたい」「音を正確に記録し、患者さんがセカンドオピニオンに活用できる可能性や遠隔診療に使える可能性がある」という非常に情熱的なビジョンを持っていたのです。
その後、しばらくの間が空いたのですが、昨年たまたま別の方から資金調達先とデータをきちんと活用してくれる人を探しているところがあるというお話をご紹介いただきまして、結果お会いしてみたら「あれ?小川さんじゃないですか!」ととても驚きました。
その時、お聞きしたら、超聴診器を完成させ、薬事承認を取得し、保険点数も付与された状態であることを知り、正直、「これはすごいな」と感じました。
以前のプロトタイプの段階からしっかりと進化し、薬事承認まで取得し、溜め込んだデータをまもなくAI活用が可能な段階にまで持っていったことに感銘を受けるとともに可能性しか感じませんでした。
超聴診器を使用することで収集されるデータとして、例えばデバイスを用いた臨床研究などで心疾患や心不全などに関するものもあると思います。そうしたデータにMDVデータを組み合わせることで、現時点はAIを活用する前段階だとしても今後、十分な価値を生み出せると考えました。そのため、資本業務提携の判断に至ったのです。

それでは今後AMIさんが集積するデータとMDVのデータと組み合わせることで新たな価値を創出するイメージを持っているのかと思いましたが、この辺の可能性はどう考えますか?

中村

この点については、まだ詳細なことはお話できない段階ですが、超聴診器から収集される直接的なデータと、超聴診器による臨床研究に必要なデータとを組み合わせることで、新たな価値を生み出す可能性は非常に高いと考えています。
現時点では、MDVは病名、薬剤、処置などの病名と介入行為に関するデータを全て収集していますが、その他のデータについてはまだ収集が進んでいない状況です。しかし、超聴診器から派生したデータと組み合わせることで、特に循環器領域においては非常に高いエビデンスを発揮できると確信しています。

これは余談ですが、中村さんは超聴診器を体験されたと聞いていますが、実際どういったものでしたか?

中村

彼らの防音室に入り、聴診器を実際に当ててもらって、自分の音に応じて波形がどう動くのかをリアルに見せてもらいました。やはりこういった形でデータが残り、音の状態が可視化されていくと、医師は少なくとも気づきを得られるのは間違いないなと感じました。
また、今回、7社からの資金調達を成功されたということは、当社と同じようにAMIさんの可能性を感じている会社さんが多かったのだと思っています。超聴診器の革新的な技術とその応用に対する期待が高まっていることを示していると感じました。

来年(2024年)の4月に医師の働き方改革の制度が動き出しますが、それを踏まえられてWEB問診を扱うレイヤードとも業務提携をされたのかと思います。レイヤードと業務提携を進めることによる可能性をどう考えていますか。

中村

まずレイヤードの毛塚社長とは、いろいろなビジネスが組めそうとだと感じています。
そしてもちろんSymview(WEB問診)のプロダクトに関しても大いに可能性を感じています。
なぜその患者さんが病院を受診したのか、その入り口である問診データに関しては元々データとして欲しいと考えておりました。加えてWEB問診時に、患者さんへデータ取得の許諾を得ていますので、問診後に受診し、その後のフォローのために患者さんにリーチすることが可能です。
また当社もPHR(パーソナルヘルスレコード)システムのカルテコを運用していますが、患者さんの今の状態を確認するという簡易なPHR的な使い方という意味でも、Symviewのインフラを使って十分実装することは可能だとも考えました。
例えば入り口にWEB問診があり、MDVが中核のデータを担い、聴診時の結果を超聴診器でデータを収集するスキームも考えられます。このように、当社のデータを軸にしたアライアンスの可能性は広がっているのかなと感じています。

WEB問診は病院・ドクターの働き方改革にもつながると思いますが、患者さんの目線としても主訴があって、結果的にどういう診断がついたかも分かると思いますので、患者さんが早く自分の主訴から診断などにつながるための助けにもなるかもしれないですね。

中村

患者メリットとして、もう少し手前のところにもありまして、皆さんもご経験あるかもしれないですが、紙の問診票を書いた後に診察室に入って、「今日どうされましたか?」って聞かれることってありますよね。その瞬間にもう患者さんからすると完全に重複しているわけです。そこで問診結果が電子カルテに反映されていると、医師はそれを見ながらコミュニケーションができる。それによって医師と患者の対話がしやすくなり、その結果も紙ではなく電子的に管理されていることで今後にも生かされる。ここの価値は十分大きいのと思います。
それと意外に大きい点として、患者は医師から「不安なこととか、相談したいこはありますか?」と聞かれてもなかなか、言えなかった経験ってありませんか?その辺りをWEB問診で事前に伝えておくと、医師がキャッチアップしてくれる可能性が広がる点もメリットかもしれません。

レイヤードのWEB問診はこれから数病院でスタートします。ここに対する期待はどうでしょう?

中村

WEB問診における期待としましては今までお話した、今まで得られなかった背景情報のデータを収集できる点、また医師の働き方改革、そして患者側のメリットとなる体験の積み上げ、この3つがあります。
そしてそれに加えて大きい可能性があると思っている点が、WEB問診の機能の一環として「電子同意書」があります。この電子同意書は説明時間の簡略化や、同意書が電子カルテと連携し情報のデジタル化を可能にします。ここは医師、・看護師、メディカルクラークの方々、入退院の調整部門の方々も含めて多方面での働き方改革が実現できそうな予感がしています。
実際、WEB問診を開始する病院さまとお話をしていても、WEB問診だけでなく併せて、電子同意書にも高い関心を示されていますので、WEB問診・電子同意書の両方に高い期待を持っています。

メディカル・データ・ビジョン株式会社 取締役 中村正樹

中村 正樹

2007年10月当社入社、2018年3月取締役就任。入社以来、EBM事業に携わり、データ利活用サービスを拡大・推進、その後、MDVトライアル株式会社において、当社データを活用した新サービス拡大に取り組む。2023年2月よりアライアンス推進室長、現在は今後の事業展開を見据え、2024年3月よりEBM本部及びデータネットワーク企画本部管掌役員。
当社子会社のメディカルドメイン株式会社代表取締役社長を兼任(2021年1月~)
趣味:筋トレ、バスケ、ウォーキング、お祭り(神輿担ぎ)

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