日本における肥大型心筋症と非弁膜症性心房細動を合併する患者における経口抗凝固療法
Hiroaki Kitaoka, Robert Carroll, Natalie Eugene, Bruno Casaes Teixeira, Yukako Matsuo, Toru Kubo
| 題名 | Oral anticoagulation in patients with hypertrophic cardiomyopathy and non-valvular atrial fibrillation in Japan |
|---|---|
| 著者 | Hiroaki Kitaoka, Robert Carroll, Natalie Eugene, Bruno Casaes Teixeira, Yukako Matsuo, Toru Kubo |
| 出典 | ESC Heart Failure |
| 領域 | 非弁膜症性心房細動 |
PMID: 39300752 PMCID: PMC11769629 DOI: 10.1002/ehf2.15039
目的
肥大型心筋症(HCM)と非弁膜症性心房細動(NVAF)を合併する患者における直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の使用を支持する十分なデータは限られている。本研究では、日本におけるHCMとNVAFを合併する患者において、DOACとワルファリンの安全性および有効性を比較評価した。
方法
本後ろ向き観察研究では、2011年7月から2021年6月までにHCMとNVAFと診断された日本の患者コホートを、日本の請求データベース(MDV)を用いて評価した。治療群間の人口統計学的および臨床的特徴のバランスを取るため、最近傍法による傾向スコア(PS)マッチング(DOAC:ワルファリン=2:1)を実施した。主要評価項目は、大出血のリスクおよびあらゆる出血(大出血または小出血)とした。副次評価項目には、ベースライン時の人口統計学的および臨床的特徴の記述および脳卒中/全身性塞栓症(SE)のリスク評価を含めた。
結果
傾向スコアマッチング後、DOAC群2,955例、ワルファリン群1,603例が評価対象となった。DOAC群とワルファリン群の平均年齢[標準偏差(SD)]はそれぞれ74.8(10.5)歳と75.3(10.2)歳だった。患者の大多数は男性であり(DOAC:58.8%、ワルファリン:59.6%)、合併症を有し(DOAC:97.5%、ワルファリン:96.6%)、β遮断薬を投与されていた(DOAC:62.5%、ワルファリン:62.3%)。主要出血およびいずれかの出血のリスクは、コホート間で類似していた [ハザード比(HR)、0.80;95%信頼区間(CI)、0.50-1.27; P = 0.336 および HR, 0.93; 95% CI, 0.78-1.11; P = 0.420]。一方、DOACで治療を受けた患者では脳卒中/SEのリスクが低かった(HR, 0.67; 95% CI, 0.47-0.96; P = 0.027)。重大な出血のリスク増加と関連する要因には、既往の出血(HR、1.97;95% CI、1.22-3.17)と慢性腎疾患(HR、1.87;95% CI、1.10-3.18)が含まれた。脳卒中/SEのリスク増加は、既往の虚血性脳卒中(HR、2.97;95% CI、2.05-4.29)、末梢動脈疾患(HR、1.88;95% CI、1.22-2.88)および慢性腎疾患(HR、1.87; 95% CI, 1.24-2.83)だった。
結論
DOAC治療患者はワルファリン治療患者と比較して脳卒中/SEのリスクが低く、出血リスクは同等だった。既往の脳卒中は脳卒中リスクを約3倍に増加させることが示された。この大規模なリアルワールドデータの研究は、日本においてHCMとNVAFと診断された患者は、DOACで安全かつ有効に治療可能であることを示唆した。




