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視神経脊髄炎スペクトラム障害患者における重篤な感染症の発生率と危険因子:日本の請求データベース研究RWD × 医学論文解説

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論文紹介

 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、免疫系の異常により視神経、脊髄、脳などに炎症を生じる自己免疫疾患であり*1、日本では国の指定難病(指定難病13)になっている。*2。近年の疫学調査では、国内患者数は約6,500人と推定されており、有病率は人口10万人あたり約5人と報告されている*3
NMOSDの治療は、急性期治療、再発予防治療、対症療法の3本柱で構成されており、根治療法は存在しないものの、再発抑制と後遺症の軽減が治療目標である。特にアクアポリン4抗体陽性例では、生物学的製剤や免疫抑制療法が再発予防に用いられている。
一方で、これらの治療薬の多くは免疫抑制作用を有するため、感染症は重要なリスクとなる。実際、感染症はNMOSD治療における主要な合併症リスクの一つとされている。本研究では、希少疾患であるNMOSD患者を対象に、データベースを用いた後ろ向きコホート研究として、重篤な感染症の発生率およびその危険因子が検討された。

*1 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)について | 日本神経免疫学会

*2 多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)病気の解説 – 難病情報センター

*3 多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)概要・診断基準等 – 難病情報センター

視神経脊髄炎スペクトラム障害患者における重篤な感染症の発生率と危険因子:日本の請求データベース研究

Noriko Isobe, Tetsuro Oda, Tomohiro Yamaguchi, Yuta Kamei, Takahiko Tsumuraya, Akinori Yuri, Ayako Nakasone, Keiko Asao, Shinichi Matsuda

題名Incidence and Risk Factors for Serious Infections in Patients with Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder: A Claims Database Study in Japan
著者Noriko Isobe, Tetsuro Oda, Tomohiro Yamaguchi, Yuta Kamei, Takahiko Tsumuraya, Akinori Yuri, Ayako Nakasone, Keiko Asao, Shinichi Matsuda
出典Neurology and Therapy
領域視神経脊髄炎スペクトラム障害

PMID: 40676373 PMCID: PMC12450173 DOI: 10.1007/s40120-025-00794-y

背景

 重篤な感染症は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者の主な死亡原因である。本研究では、NMOSD患者における重篤な感染症の発生率と危険因子を評価した。

方法

 本後ろ向きコホート研究は、2016年1月から2022年8月までに初めてNMOSDと診断された日を指標日とし、その患者を対象とした。データは2008年4月から2022年8月までにMedical Data Visionデータベースから抽出された。重篤な感染症は、入院中に診断された感染症と定義した。発生率、累積発生率、および潜在的な危険因子の推定ハザード比(HR)を、時間固定および時間依存性共変量を用いたCox比例ハザードモデルにより推定した。

結果

 本研究(n = 4231)において、重篤な感染症の発生率は100人年あたり5.77[95%信頼区間(CI)5.23-6.35] であり、累積発生率は6か月追跡時で2.87%[95% CI 2.33-3.49%]、5年追跡時で12.48%[95% CI 10.62-14.50%]であった。年齢[75歳以上(基準群:18-35歳);HR 2.48、95% CI 1.36-4.53]、癌[HR 1.91、95% CI 1.11-3.29]、糖尿病[HR 1.43、95% CI 1.04-1.96]、神経因性膀胱[HR 1.97、95% CI 1.46-2.66]、尿路結石症[HR 1.97、95% CI 1.02-3.78]、NMOSD再発回数[HR 1.27、95% CI 1.03-1.56]、および経口グルココルチコイドの低用量投与[> 0 mg かつ < 5 mg(基準値 0 mg); HR 1.80、95% CI 1.21-2.69]は、重篤な感染症のリスク増加と関連していた。

結論

 NMOSD患者集団における重篤な感染症の発生率は、主に従来療法で治療されている実臨床環境においても、特定の治療下での臨床試験や観察研究で報告されたものと同等であった。重篤な感染症における複数の潜在的危険因子が特定された。これらの結果は、患者と臨床医が治療選択肢を判断する際、より適切な意思決定に資する可能性がある。


前田 玲

日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家

外資系製薬会社において20年以上医薬品安全性監視関連業務(RMP、使用成績調査など)に従事してきた。また業界活動を通して薬機法、RMP、GPSP、データベース・アウトカムバリデーション関連の通知類に対してコメントしてきた。現在、MDVなどの顧問として医薬品の安全性管理の観点から助言している。

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