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難治性潰瘍性大腸炎患者の臨床的特徴:日本の診療報酬請求データベースを用いたネステッド・ケース・コントロール研究RWD × 医学論文解説

論文紹介

 本論文では、潰瘍性大腸炎の中でも、特に難治性症例に着目し、リアルワールドデータ(RWD)を用いてその疫学的および臨床的特徴を明らかにすることを目的としています。

潰瘍性大腸炎は、主として大腸粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症であり、持続性または反復性の粘血便・血便を主症状とするなど、患者の生活の質に大きな影響を及ぼします。病態は活動期と寛解期に分けられ、治療は寛解導入および寛解維持を目的として、薬物療法および外科療法が選択されます。

薬物療法の中心は5-ASA製剤やステロイド剤ですが、ステロイド抵抗例やステロイド依存例、生物学的製剤等を用いても疾患活動性のコントロールが困難な症例などは難治例とされます。難治例にはステロイド依存例と非依存例が存在し、近年ではJAK阻害剤などの新規治療も導入されていますが、治療選択は依然として複雑です*1

なお、下記要約には記載されていませんが、原典には、難治性潰瘍性大腸炎患者の同定にあたり、日本のレセプトデータを用いた陽性的中率(PPV)約91%の疾患同定アルゴリズムが用いられており*2、症例抽出の妥当性を高めている点も特筆されます。Open Accessで公開されていますのでご興味のある方はご一読ください。

*1:潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和7年度改訂版(令和8年3月31日).厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(久松班)」令和7年度分担研究報告書

*2:Validation of a claims‐based algorithm to identify cases of ulcerative colitis in Japan – Ogino – 2022 – Journal of Gastroenterology and Hepatology – Wiley Online Library

難治性潰瘍性大腸炎患者の臨床的特徴:日本の診療報酬請求データベースを用いたネステッド・ケース・コントロール研究

Katsuyoshi Matsuoka, Ataru Igarashi, Noriko Sato, Naomi Mizuno, Manabu Ishii, Masato Iizuka, Katsuhiko Iwasaki, Ayako Shoji, Tadakazu Hisamatsu

題名Clinical characteristics of patients with difficult-to-treat ulcerative colitis: a nested case-control study using a Japanese claims database
著者Katsuyoshi Matsuoka, Ataru Igarashi, Noriko Sato, Naomi Mizuno, Manabu Ishii, Masato Iizuka, Katsuhiko Iwasaki, Ayako Shoji, Tadakazu Hisamatsu
出典Intestinal Research
領域潰瘍性大腸炎

PMID: 40275819 PMCID: PMC12884122 DOI: 10.5217/ir.2024.00119

背景・目的

 advanced therapy(生物学的製剤、JAK阻害薬などのadvanced small molecules、カルシニューリン阻害薬などの高度治療)の登場にもかかわらず、いわゆる「難治性(”difficult-to-treat” :D2T)」潰瘍性大腸炎(UC)の症例は依然として存在する。本研究の目的は、D2T UC患者の疫学的および臨床的特徴を明らかにすることである。

方法

 2018年1月から2023年4月までにadvanced therapy(生物学的製剤、advanced small molecules〔JAK阻害薬など〕、カルシニューリン阻害薬)を開始したUC患者を対象に、MDVデータベースを用いたネステッド・ケース・コントロール研究を実施した。D2T UC患者は、advanced therapy初回開始後2年以内にadvanced therapyを2回以上変更した患者、またはUCの手術を受けた患者と定義した。

結果

 D2T UC患者の定義に該当したのは401人(16.7%)、非D2T UC患者の定義に該当したのは1,996人(83.3%)であった。開始年による1対1のマッチング後、各群355人の患者が解析対象となった。初回advanced therapy後の追跡期間に基づく感度分析を含む多変量ロジスティック回帰分析により、ベースライン期間(6ヶ月)中に処方されたコルチコステロイド用量が30 mg/日以上であることが、D2T UCと関連していることが示された。D2T UC患者において、初回advanced therapyの期間中央値は99日、年間のadvanced therapy実施回数の中央値は1.7回であった。非D2T UC患者の78%において、初回advanced therapyは2年間継続された

結論

 advanced therapyを開始したUC患者のうち、D2T UC患者の割合は16.7%であった。D2T UCと最も強い関連が認められた要因は、advanced therapy開始前の6ヶ月間に1日30mg/日以上のコルチコステロイド投与を要したことである。


前田 玲

日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家

外資系製薬会社において20年以上医薬品安全性監視関連業務(RMP、使用成績調査など)に従事してきた。また業界活動を通して薬機法、RMP、GPSP、データベース・アウトカムバリデーション関連の通知類に対してコメントしてきた。現在、MDVなどの顧問として医薬品の安全性管理の観点から助言している。

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