潰瘍性大腸炎の患者数推移と治療薬使用動向

潰瘍性大腸炎は免疫機能の異常により大腸の粘膜が慢性的に炎症を起こす自己免疫疾患である。主な症状として、腹痛、下痢、血便などがあり、重症化すると大腸がんを合併するリスクが指摘されている。特に軽症から中等症の患者に対しては、腸用アミノサリチル酸製剤が第一選択薬として広く使用されている。
腸用アミノサリチル酸製剤は、腸内の炎症を抑える効果があり、長年にわたり標準治療として用いられてきた。一方、近年はJAK阻害薬も新たな治療選択肢として注目されており、症状や重症度に応じた適応が求められている。
そこでMDVのデータを用いて、潰瘍性大腸炎の四半期別患者数の推移と男女・年齢別、潰瘍性大腸炎治療薬の分類別推移、JAK阻害薬の処方件数の推移を調査した。

最初に潰瘍性大腸炎の四半期別患者数の推移を調査した。

データ対象期間：2019年1月～2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数：342

全体として増加傾向にあり、特に2021年以降は右肩上がりで推移していることが明らかになった。

続いて、潰瘍性大腸炎の患者数を男女・年齢別にみてみた。

データ対象期間：2019年1月～2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数：342

男女ともに40代が最も多く、その後は加齢とともに減少傾向が見られた。また、男性の方が女性よりも全体的に多いことが確認された。

次に、潰瘍性大腸炎治療薬の分類別推移について、基本治療として広く知られる「腸用アミノサリチル酸製剤」は除いて調査した。

データ対象期間：2019年1月～2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数：342

従来の治療法としては、基本治療として広く知られる「腸用アミノサリチル酸製剤」を除くと、「その他の免疫抑制薬」が多く使用されており、次なる基本治療として確立していることが確認できた。また、「JAK阻害薬」や「インターロイキン阻害薬」も処方数が徐々に増加しており、近年導入された比較的新しい治療法として使用が拡大している可能性が考えられる。これらの傾向から、潰瘍性大腸炎治療における選択肢が多様化していることが考えられる

さらに、JAK阻害薬の処方件数の推移を詳しく調査した。

データ対象期間：2019年1月～2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数：342

「ウパダシチニブ水和物」は、販売開始後から徐々に処方数が増加し、2023年以降は3剤の中で最も多く処方されている薬剤となっていることが確認できた。また、「フィルゴチニブマレイン酸塩」も処方数が徐々に増加傾向であることがわかった。

※本記事は2025年6月2日付で公開されたものです。