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帯状疱疹の疫学動向と治療実態の分析

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帯状疱疹ワクチンの定期接種制度が2025年4月、全国でスタートした。対象は原則として65歳以上の高齢者で、生ワクチンと不活化ワクチンのいずれかを選択できる。

帯状疱疹は多くの場合、小児期に感染する水痘ウイルスが原因で発症する。水痘の治癒後もウイルスは体内の神経節に潜伏し、加齢や疲労、ストレスなどによって免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して発症に至る。発症率は50代から上昇し、80歳までに約3人に一人が発症するとされている。

発症時には皮膚の神経に沿って強い痛みを伴う赤い発疹や水疱が出現する。症状は主に胸部や背部、上肢に現れるが、顔面や頸部にも生じることがある。多くは2〜4週間程度で皮膚症状と痛みが改善するものの、神経損傷が残る場合には、痛みが数か月から数年にわたって持続することがある。

そこでMDVのデータを用いて帯状疱疹の患者数推移(全体と月別)と男女・年齢別、帯状疱疹後神経痛の発症率、診療科別の帯状疱疹患者割合、治療薬の患者数の推移を調査した。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317

新型コロナウイルス感染拡大の影響で受診抑制があった2020年に一時的な患者数の減少がみられたが、その後は増加傾向にあることがグラフから読み取れた。

さらに同期間を月別で詳しくみてみた。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317

2月は毎年、患者数が減少しその後、3月から春先にかけては増加する傾向がみられた。また、7月から10月にかけて患者数が増加する傾向にあり、夏から秋にかけて発症が増える季節性が認められた。これは、気温や湿度の変化、夏季の疲労蓄積、免疫力の低下などが関係している可能性がある。一方、11月から翌年1月にかけては、患者数がやや横ばい、あるいは減少傾向であることが分かった。

続いて、男女・年齢別でみてみた。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317

年齢とともに増加傾向にあり、70代の患者数が最も多いことがわかった。また、男女差はあまりないがやや女性の方が多いことがグラフから読み取れた。

続いて、帯状疱疹患者のうち帯状疱疹後神経痛を発症している割合を男女・年齢別で調査した。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317

帯状疱疹後神経痛の発症率は年齢とともに増加する傾向がみられた。特に80代が最も高い発症率となっていた。男女差においては全体通じて男性の方が、わずかに発症率が高い傾向がみられた。

続いて、診療科別に帯状疱疹患者の割合を調査した。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317
対象薬剤:10027:アシクロビル(どちらも,剤型全対象)、10132:アメナメビル(どちらも,剤型全対象)、11855:バラシクロビル塩酸塩(どちらも,剤型全対象)、12033:ファムシクロビル(どちらも,剤型全対象)

帯状疱疹患者の診療科別受診割合をみると、皮膚科が約半数を占めており、発疹や皮膚の痛みといった主な症状に対応するため、多くの患者が皮膚科を受診していると考えられる。次に多いのは内科と耳鼻咽喉科で、体調不良や顔・耳まわりの症状から、これらの診療科を受診するケースが多いと思われる。
また、眼科や神経内科、救急科や外科なども少数ながら受診されており、症状の出る部位や重症度によって診療科が分かれていることがわかる。

最後に帯状疱疹治療薬の患者数推移を調査した。

データ対象期間:2019年1月~2025年3月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:317
対象薬剤:10027:アシクロビル(どちらも,剤型全対象)、10132:アメナメビル(どちらも,剤型全対象)、11855:バラシクロビル塩酸塩(どちらも,剤型全対象)、12033:ファムシクロビル(どちらも,剤型全対象)

「アシクロビル」の使用患者数が最も多く、次いで「パラシクロビル塩酸塩」が多く使用されていることがわかる。
全体としては、各薬剤とも大きな変動はなく安定した使用状況を維持しているが、「アシクロビル」に関しては2021年以降やや増加傾向がみられた。

※本記事は2025年7月3日付で公開されたものです。

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