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百日咳の感染拡大と治療薬使用動向の実態分析

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2025年、百日咳が世界中で爆発的に流行している。百日咳は百日咳菌による急性の呼吸器感染症で、けいれんを伴う激しい咳が特徴である。世界中で発生が確認されており、年齢に関係なく発症するが、特に小児に多く見られる。母体からの免疫が不十分な場合、乳児期の早い時期に感染することがあり、特に新生児や乳児初期では重症化のリスクが高い。重篤な場合には肺炎や脳障害を併発し、まれに致命的となることもある。一般的な治療には、エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が用いられ、早期投与によって症状の軽減や感染拡大の防止が期待されている。

そこでMDVのデータを使用し、患者数の推移と男女年齢別患者数と入院患者割合、マクロライド系の抗菌薬使用患者数の推移を調査した。

最初に、百日咳の患者数の推移を調査した。

データ対象期間:2023年1月~2025年4月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:264

2023年初頭は、月あたりの患者数は50〜80件程度で推移していたが、2024年後半から急激に増加し、2025年4月には335件に達していた。
特に2024年11月以降の伸びが顕著であり、この時期を境に患者数は右肩上がりとなっており、百日咳の感染が拡大している傾向がみられた。

次に、男女・年齢別で百日咳患者数を調査した。

データ対象期間:2023年1月~2025年4月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:264

百日咳は全年齢層で発症しており、特に0~9歳、10~19歳の子どもや若年層で多いことがわかった。20代以降は発症数が大きく減少するが、成人以降も一定数の患者が続いており、幅広い年代で発症がみられた。また、20代以降では女性の発症数が男性を上回る年代が多く、特に50代、60代では女性の方が目立って多いことがグラフから読み取れた。

さらに、入院患者の割合を調査した。

データ対象期間:2023年1月~2025年4月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:263

百日咳による入院は、0~9歳と90歳以上で特に多く、男女ともに3割を超えていた。一方で、10~79歳では全体的に低く、特に10代は4%と最も少ない。
このことから、乳幼児と高齢者が重症化リスクの高い世代であることがわかった。
また、一部の年代では性別差もみられ、30代では女性の入院がやや多い一方、40代女性は0%と極端に少ない。80代では男性が多く、90代では男女差がないことがグラフから読み取れた。

最後に、一般的な治療として使用されるマクロライド系の抗菌薬使用患者数の推移を調査した。

データ対象期間:2023年1月~2025年4月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数:264
対象薬剤:10029アジスロマイシン水和物、10430エリスロマイシン、10770クラリスロマイシン

百日咳患者に使用されたマクロライド系治療薬は、クラリスロマイシンとアジスロマイシンの2剤が中心となっており、特に2024年10月以降から急激に使用が増加していることがわかった。2025年4月にはクラリスロマイシン使用患者が120人、アジスロマイシンが82人と大幅に増加していた。
特定の薬剤が処方されており、患者数の増加に伴い主力薬剤の使用が増えたことがグラフから読み取れた。

※本記事は2025年8月1日付で公開されたものです。

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