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2型糖尿病の患者数推移と治療薬使用動向:SGLT2阻害薬を中心に

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 糖尿病は生活習慣病の代表的な疾患であり、国内患者数は増加傾向にある。

日本糖尿病学会は2024年、「糖尿病診療ガイドライン2024」を公表し、その中で新たSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の心血管・腎保護効果が明記された。これにより、治療戦略の見直しや薬物療法の個別最適化がさらに進展した。

毎年、11月14日はWHO(世界保健機関)が定めた、「世界糖尿病デー(World Diabetes Day)」だ。この日を機会に、糖尿病管理に対する社会的関心を高めようとの思いがある。また、世界糖尿病デーのシンボルである“ブルーサークル”は、「団結」と「希望」を象徴し、世界的な糖尿病対策の連帯を表している。

近年では、GLP-1受容体作動薬をはじめとする新規治療薬の適応拡大や臨床的有用性の認識が進み、治療選択の幅が広がっている。そこで、MDVのDPCデータを用いて、2型糖尿病患者数の推移および2型糖尿病の治療薬、SGLT2阻害薬の使用状況について分析した。

右縦軸:E10-E14(棒グラフ)、左縦軸:傷病名コード(折れ線グラフ)
データ対象期間:2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 359

2019年から2024年にかけて、糖尿病関連疾患全体の患者数は約170万人前後で推移しており、右肩上がりで増加している。
糖尿病関連疾患の上位5疾患では、「2型糖尿病」が年次を通じて増加傾向を示し、2024年には「糖尿病(詳細不明)」を上回った。「糖尿病(分類不明)」は減少傾向にあり、保険請求での病名精緻化が進んでいる可能性がある。

2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 359
ICD-10コード E11/E14(2型/病型不明糖尿病)と診断され、ATCコード A10(糖尿病治療薬)の使用が確認された症例

 2型糖尿病の治療薬別では、「DPP-Ⅳ阻害薬」が依然として最多であるが、2019年以来緩やかな減少傾向となっている。これに対して「SGLT2阻害薬」は急速に増加し、2024年には「ヒトインスリンおよびその誘導体」を上回る水準まで伸長している。SGLT2阻害薬の普及は、心腎保護効果に関するエビデンスの蓄積や、ガイドライン改訂を背景とした臨床現場での採用拡大も考えられる。「ビグアナイド系糖尿病用薬」も増加基調にあり、併用療法の基盤薬としての位置づけが継続している。

2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 359
ICD-10コード E11/E14(2型/病型不明糖尿病)と診断され、SGLT2阻害薬の使用が確認された症例

 2019年から2024年にかけて、SGLT2阻害薬全体の使用患者数は年々増加傾向を示している。特に「イプラグリフロジン L-プロリン」および「エンパグリフロジン」は、2019年時点ではそれぞれ約2万人・4万人規模であったが、2024年には10万人を超える水準へと拡大した。両薬剤とも2020年以来伸びが顕著になっている。一方、「カナグリフロジン水和物」「ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物」「トホグリフロジン水和物」「ルセオグリフロジン水和物」は、いずれも比較的緩やかな推移を示し、1~2万人前後で横ばいに推移している。
全体として、SGLT2阻害薬の処方は臨床現場で定着が進み、特に2剤を中心とした使用傾向がみられる。使用増加の背景には、糖尿病治療薬としての血糖降下作用に加え、心不全や慢性腎臓病(CKD)への有用性が広く認識されてきた点が挙げられる。加えて、ガイドライン改訂や各薬剤のエビデンス蓄積が進んだことにより、処方選択がより明確化しつつあると考えられる。

※本記事は2025年11月4日付で公開されたものです。

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