骨粗鬆症の患者数およびガイドライン新規掲載薬の利用推移
骨粗鬆症は、骨強度の低下を特徴とする全身性疾患であり、骨折リスクの増大が患者のQOL(生活の質)およびADL(日常生活動作)を著しく低下させる。特に大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折は、要介護状態へ移行する主要な原因の一つである。
日本骨粗鬆学会は2025年5月、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」を10年ぶりに改訂した。この10年間に登場したロモソズマブ(イベニティ®)、ゾレドロン酸(リクラスト®)、アバロパラチド(オスタバロ®)などの新薬の有効性が評価され、治療選択肢は大きく広がっている。
そこで、MDVデータを用いて、骨粗鬆症(M81)の患者動態および治療薬(ATCコード3群、一般名別)の使用実態を分析した。
1. 骨粗鬆症(M81)患者数の月別推移

MDVサンプルデータより下記条件で集計
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
過去6年間を通じて、患者数は増加傾向にある。2019年初頭は約23万人程度に対し、2024年後半には約25万人から26万人程度に増加した。
2. 骨粗鬆症(M81)患者数の年別比較(月別推移)

MDVサンプルデータより下記条件で集計
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
患者数は、年を追うごとに高い水準で推移しており、2023年と2024年が他の年よりも増加している。月別では、3月と10月にピークを形成し、2月と5月に減少する傾向が読み取れた。
3. 骨粗鬆症治療薬(ATCコード3群)年別使用患者数の推移

MDVサンプルデータより下記条件で集計
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
全体の処方患者数は、2019年の約22.2万人から2024年の約25.1万人へと、一貫して増加している。最も患者数が多い「骨粗鬆症および関連疾患用ビスホスホネート」(棒グラフの緑)は、2019年の約16.5万人から2024年の約17.3万人へと微増している。
「その他の骨カルシウム調節因子」(同青)は、2019年の約4.2万人から2024年の約6.4万人へと、患者数が顕著に増加している。また、処方患者数の増加は、主に「その他の骨カルシウム調節因子」が牽引している。これは、高活性なデノスマブやロモソズマブといった薬剤が、新規患者や既存治療からの切り替え患者に使用されつつあることが読み取れた。
4. 骨粗鬆症治療薬(ATCコード3群)年別使用金額の推移

MDVサンプルデータより下記条件で集計
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
全体の使用金額は、2019年約98.7億円から2024年約106.8億円へと増加しているが、構成比が大きく変化している。
「その他の骨カルシウム調節因子」(折れ線グラフの青)は、2019年の約24.5億円から2024年の約54.2億円へと2倍以上に急増し、2021年以降は最も高い金額を占めている。
「骨粗鬆症および関連疾患用ビスホスホネート」(同緑)は、2019年の約36.4億円から2024年の約19.8億円へと大幅に減少している。
ビスホスホネート製剤の処方患者数は増加傾向であることから、ジェネリック製品への切り替えなどにより使用金額の減少として現れている。同時に「その他の骨カルシウム調節因子」は処方患者数の増加と高単価により使用金額の増加が読み取れた。
5. 処方患者数(上位5薬剤)の推移

MDVサンプルデータより下記条件で集計
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
骨粗鬆症治療の使用薬剤のうち、上位5薬剤を処方患者数別に調査した。
エルデカルシトール(折れ線グラフの青)は、活性型ビタミンD3製剤の中で2019年以降、最も処方患者数が多く、2024年には約13万人に達し、増加傾向にある。
アレンドロン酸ナトリウム水和物(同橙)は、ビスホスホネート製剤の中で最も処方患者数が多く、約8万〜9万人で安定して推移している。
デノスマブ(抗RANKLモノクローナル抗体:同紫)は2019年以来、安定的に増加傾向にあり、2024年には約5万人に達している。また、デノスマブは前述のATCコード3群の年別使用患者数の推移での「その他の骨カルシウム調節因子」の患者数増加を裏付けており、市場でのプレゼンスが向上していることが分かった。
6. 処方薬剤金額(上位5薬剤)の推移

MDVサンプルデータより下記条件で出力
2019年1月~2024年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
基礎条件該当施設数 360
最後に骨粗鬆症治療の使用薬剤のうち、上位5薬剤を処方薬剤金額別に調査した。
デノスマブ(折れ線グラフの橙)が2020年以降、一貫して金額トップを維持しており、2023年に約30億円を超え、2024年は微減の約29億円となっている。
テリパラチド(副甲状腺ホルモン(PTH)製剤:同紫)は2019年に約30億円でトップであったが、その後急激に減少し、2024年には約5億円以下となっている。
エルデカルシトール(同紺)は2020年まで約23億円で横ばいに推移するが、2024年にかけて約8億円まで減少している。
ビスホスホネート製剤であるミノドロン酸水和物(同緑)とリセドロン酸ナトリウム水和物(同水色)は、2024年には約3億円となり減少傾向にある。
デノスマブの金額トップは、高単価と患者数増加の相乗効果を示している。一方で、テリパラチドの急激な金額減少は、バイオシミラーや後発品の影響、または他の骨形成促進薬への切り替えが進んでいることが読み取れた。
※本記事は2025年12月1日付で公開されたものです。
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