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大腸癌1stライン治療における患者数とレジメン服用期間の推移

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 毎年3月は、2000年2月に米国で制定された「大腸がん啓発月間」であり、国際的なブルーリボン運動が広まっている。国内では、公益財団法人日本対がん協会をはじめとする複数の団体が啓発活動に取り組んでおり、各地のランドマークを青く照らすブルーリボンライトアップなどを展開している。

大腸癌は国内の癌罹患数において常に上位を占めており、その治療は外科的切除を基本としつつ、遺伝子異常や患者背景を踏まえた個別化薬物療法の進展により高度化している。近年は周術期管理の最適化が重要な研究領域となっている。Stage III結腸癌では術後補助化学療法が標準治療である一方、局所進行例や高リスク症例では、微小転移制御やダウンステージングを目的とした術前化学療法の有用性が臨床試験で示されつつあり、選択的な導入が検討されている。 そこで、MDVデータを用い、2023年から2025年における周術期薬物療法(NAC/ADJ)の有無、性別別で大腸癌1stラインの主要レジメンの服用患者数と服用期間の推移について分析した。

分析条件-

・対象患者:Stage III以上で2ndライン治療開始が確認された患者
・観察期間:2023年~2025年
・対象患者数:31,133名(期間合計)

①主要レジメン(NAC/ADJあり、男性)

周術期薬物療法(NAC/ADJ)を実施した男性患者における1stライン治療の推移を示す。

  • 患者数推移
    「FOLFOX+ベバシズマブ」が全期間を通じて最多の患者数である。2025年はデータ集計期間の影響もあり、各レジメンとも減少しているが、相対的な順位に変動はない。
  • 服用期間
    2023年時点では「FOLFOX+セツキシマブ(253.1日)」や「FOLFIRI+セツキシマブ(244.9日)」が長期であったが、2024年にかけて全体的に短縮傾向にある。

②主要レジメン(NAC/ADJあり、女性)

周術期薬物療法(NAC/ADJ)を実施した女性患者における1stライン治療の推移を示す。

  • 患者数推移
    男性同様「FOLFOX+ベバシズマブ(2023年:118人、2024年:109人)」が最多であり、次いで「FOLFIRI+ベバシズマブ(2023年:53人、2024年:48人)」が続く。
  • 服用期間
    2023年時点では「FOLFIRI+パニツムマブ(248.0日)」や「IRIS+ベバシズマブ(247.6日)」が長期であったが、2024年には多くのレジメンで150日〜180日程度に収束している。2025年にはさらに短縮し、100日を切るレジメンが目立っている。

③主要レジメン(NAC/ADJなし、男性)

周術期薬物療法(NAC/ADJ)の実施歴がなく、初発または再発時に1stライン治療を実施した男性患者における推移を示す。

  • 患者数推移
    「FOLFOX+パニツムマブ」が最も使用されており、次いで「FOLFOX+ベバシズマブ」となっている。
  • 服用期間
    2023年は「IRIS+ベバシズマブ(300.0日)」や「FOLFIRI+パニツムマブ(294.8日)」が極めて長期であったが、2024年以降は急速な短縮が見られる。

④主要レジメン(NAC/ADJなし、女性)

周術期薬物療法(NAC/ADJ)の実施がなく、初発または再発時の1stライン治療を実施した女性患者における推移を示す。

  • 患者数推移
    「FOLFOX+ベバシズマブ」が最多(2023年:105人、2024年:82人)であり、次いで「XELOX+ベバシズマブ(2023年:77人、2024年:70人)」が続く。男性で多かった「FOLFOX+パニツムマブ」は3番手となっている。
  • 服用期間
    2023年は「SOX+ベバシズマブ(308.5日)」が突出して長かった。しかし、2024年には150日〜230日程度に減少し、2025年には「IRIS+ベバシズマブ(180.5日)」を除き、多くのレジメンが80日〜110日前後まで短縮している。

グラフ全体の見解

全グラフを通じた共通の傾向として、2023年から2024年にかけてレジメン服用期間の平均日数は短縮傾向を示している。2025年は観察期間が途中まである影響を受け、さらに短く算出されている可能性があるものの、近年の短縮傾向は、治療効果判定の早期化、分子標的薬を含む治療戦略の最適化、病勢進行や切除可能性評価に基づく後方ラインへの早期移行など、治療マネジメントの高度化を反映している可能性が考えられる。 レジメン選択については、治療背景による差異が認められた。周術期薬物療法(NAC/ADJ)を受けた群では男女ともに「FOLFOX+ベバシズマブ」が最多であり、再発抑制や病勢管理を考慮した抗VEGF併用療法が選択される傾向が考えられる。

一方、周術期薬物療法(NAC/ADJ)歴のない男性群では「FOLFOX+パニツムマブ」が最多であり、腫瘍縮小効果や奏効率を重視した抗EGFR抗体併用療法が選択されている可能性がある。周術期薬物療法(NAC/ADJ)歴のない女性群では再び「FOLFOX+ベバシズマブ」が最多であり、患者背景や治療状況の違いを踏まえた治療選択がなされている実臨床における傾向が読み取れた。

【参考】

・大腸癌研究会『大腸癌治療ガイドライン医師用2024年版』

・日本癌治療学会『がん診療ガイドライン 一次治療の方針を決定する際のプロセス』
http://www.jsco-cpg.jp/colorectal-cancer/algo/#V-2

※本記事は2026年3月5日付で公開されたものです。

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