内分泌・代謝疾患の患者数動態と診断前検査値の経年推移
内分泌・代謝疾患は、ホルモン分泌や代謝異常に起因し、長期的な管理を要する疾患領域である。近年は、心腎保護効果を有する治療薬の登場などを背景に、合併症リスクを踏まえた個別化治療の重要性が高まっている。2026年6月に、日本内分泌学会学術総会と国際内分泌学会(ICE2026)が日本で共同開催される予定であるため、国内外で本領域への関心が高まりそうだ。
国際的な注目が集まるこの時期に合わせ、MDVのDPCデータおよび「MDV analyzer for Clinical Insight」を用い、内分泌・代謝疾患における国内患者数の推移に加え、診断前180日間における主要検査値の平均推移について分析した。
1. 内分泌・代謝疾患の実患者数上位10疾患の推移(2025年1月〜12月)

データ期間:2025年1月~2025年12月
指定年月のデータが全て揃っている病院
データの推移:
2025年の四半期別データにおいて、「リポ蛋白代謝障害及びその他の脂血症(E78)」が年間実患者数2,692,822人で最多であり、各四半期とも191万〜195万人程度で推移している。次いで「2型糖尿病(E11)」が年間実患者数1,755,179人(各四半期118万〜121万人前後)、「詳細不明の糖尿病(E14)」が年間実患者数1,177,766人で続く。全体として季節による大きな変動は見られなかった。
見解:
脂質異常症や2型糖尿病などの頻度が高い慢性疾患が上位を占め、年間を通じて受診動態が安定している。「詳細不明の糖尿病」の一定数の存在は、診断初期段階における病型確定前の登録や、病型分類の未確定例を反映している可能性がある。実臨床における適切な病型分類や治療最適化に向けた疾患啓発・診断支援の重要性が改めて示唆される。
2. 主要な代謝関連疾患における診断前検査値の経年推移(2022年〜2025年)
主要な代謝関連疾患における主要検査値項目に関して、診断日前180日間の検査値平均を抽出した。

データ期間:2022年1月~2025年12月
指定年度のデータが取得できる病院
データの推移:
2022年から2025年にかけて、2型糖尿病(E11)の「HbA1c(NGSP)」は6.94%から6.78%へ、「グルコース」は145.34 mg/dLから141.03 mg/dLに低下傾向を示している。リポ蛋白代謝障害及びその他の脂血症(E78)の「総コレステロール」は202.18 mg/dLから195.66 mg/dLへ、「LDL-コレステロール」は123.71 mg/dLから119.93 mg/dLへ減少傾向を示している。
見解:
主要な代謝関連指標において、診断日前180日間の検査値平均は経年的に改善傾向が認められた。本結果は、健診・スクリーニング機会の拡大や疾患認知向上に伴い、従来よりも軽症段階で診断に至る症例割合が増加している可能性を示唆している。
また、糖尿病・脂質異常症領域では、心血管・腎イベント予防を重視した早期介入の重要性が浸透してきたことにより、医療機関における精査・フォローアップのタイミングが前倒しになっている可能性も考えられる。今後は、早期診断患者に対する適切な治療選択や長期アウトカム改善に向けた情報提供の重要性がさらに高まると考えられる。
3. 主要な甲状腺・副甲状腺疾患における診断前検査値の経年推移(2022年〜2025年)
甲状腺・副甲状腺疾患における主要検査値項目に関して、診断日前180日間の検査値平均を抽出した。

データ期間:2022年1月~2025年12月
指定年度のデータが取得できる病院
データの推移:
2022年から2025年にかけて、甲状腺機能亢進症(E05)の「TSH」は3.69 μU/mLから2.83 μU/mLへ低下し、「FT3」および「FT4」も同様に低下傾向で推移している。副甲状腺機能亢進症及びその他の副甲状腺障害(E21)の「カルシウム」は8.59 mg/dLから8.48 mg/dLへ、「無機リン」は4.55 mg/dLから4.43mg/dLへ微減し、「インタクトPTH」は年次による増減を伴いながらも 264.75 pg/mLから233.42 pg/mLへ全体的に低下している。
見解:
確定診断の180日前という早期段階において、一部疾患では主指標となるホルモン関連検査値に経年的な変化が認められた。こうした変化は、医療現場における疾患啓発やスクリーニング機会の拡大を反映している可能性を示唆している。
また、非特異的な自覚症状(倦怠感や筋力低下など)を契機とした早期検査の実施や、他疾患精査の過程で潜在的な甲状腺・副甲状腺機能異常が偶発的に発見されるケースの増加も背景にあると考えられる。
今後は、軽症段階からの適切な介入や長期合併症予防の観点から、早期診断後の治療最適化に関する情報提供の重要性がさらに高まると考えられる。
※本記事は2026年6月1日付で公開されたものです。
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