コラム

「MDVの提供サービス、サポートについて 論文と治験」 MDV Inside 第5回

では以前、東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士先生と共にコロナ禍における複数の研究に参加されていましたし、中村さんの名前も論文に入っていたと思います。まず、この研究はどういった経緯で始まったのでしょうか?そして、研究に参加して良かったことや今後の展望、自身の名前が論文に入っていることに対する感想などはありますか?

中村

元々宮脇先生とは知人からの紹介で知り合いました。当時日本においてCOVID-19に関する論文が非常に少なかったため、宮脇先生が日本の状況を世界に正確に伝えたいという思いがあり、私たちはデータ提供の立場で共同研究に参加しました。参加して良かった点は、宮脇先生自身がデータに対する理解が非常に早かったため、データの解釈なども一度、説明させていただいた後は、ご自身が迅速に進めていかれるスピード感がありました。そのため、論文化に至るまでのプロセスが非常にスムーズでした。当時、日本ではCOVID-19に関連した論文がわずか10本程度しか出ていなかった時期に、連続して3~5本の論文を出せたと記憶しています。このように迅速に論文という結果を出せたことや、当社として共同研究に参加できたことは非常に良い点だと思っています。
論文への名前掲載については、初めて自身の名前が論文に掲載された時は、当時の解析担当の女性社員の名前も一緒に掲載されており、一緒に学会発表を見に行きました。そこで、「こういう風に研究結果が世の中に発信されるのだな」と感慨深かったです。

今後例えば希少疾患領域など、どのような疾患領域で共同研究として関わっていきたいかなど考えはありますか?

中村

希少疾患領域については、社会的な課題を含めて考えていきたいと思っています。また、臨床医の先生方が直面している実際の問題をデータ上でどのようにサポートできるかについても考えています。これまでは主に公衆衛生や薬剤疫学の研究者の方々との共同研究が中心でしたが、今後もその分野に取り組み続ける一方で、より臨床に近い分野での分析にも取り組んでいきたいと考えています。

現時点でも実際に、臨床医の先生方が公衆衛生の分野に参加して当社と共同研究をしているケースは多くあります。しかし、当社のデータについて詳しく知らない臨床の先生方も多くいらっしゃるため、そうした領域の先生方に対して「MDVのデータではこうしたことが可能です」ということを示し、私たちがそうした先生方に寄り添えるような関係を築いていきたいです。

そして、人工知能(AI)やデジタル・トランスフォーメーション(DX)に関するテーマが増えていく中で、私たちのデータをどのように活用してデータドリブンな取り組みをするのか、そのようなケースも増えていくのではないかと考えています。

それでは治験、臨床研究や臨床試験(治験)に対してMDVがどのように関わっているのか、関わっていけるのかについてはどう考えていますか?

中村

まず、国内において症例が存在することを示す意味で、大規模なデータが活用できる可能性は非常に大きいと考えています。

現在は、医療機関から許可を得て、どの施設に対象患者が存在するのかまでの情報を提供することができます。しかし、基本的に患者さん個人の情報までは提供することはできません。
臨床研究や治験において、当社のデータベースから被験者がどの施設にいるのか、スクリーニングの結果、参加患者の詳細情報まで提供できるように、データベースの有用性を示すことにつなげたいと思います。

希少疾患領域の治験では、2019年に貴重な経験をしました。東京大学大学院薬学系研究科の林久允准教授が携わっていた小児の希少・難治性疾患「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(PFIC2)」に対して、「尿素サイクル異常症」を適応症とする「ブフェニール」(一般名:フェニル酪酸ナトリウム)を薬剤とする治験でした。

この治験では、小児の希少・難治性疾患だけに症例(治験参加者)が集まらないことが課題になっていました。治験参加者が集まらず、日本医療研究開発機構(AMED)からの資金提供を受けられなくなる瀬戸際でした。そこでMDVは、データを使って治験参加者を募ることでご協力させていただきました。

診療データを検索することで、複数の小児を探し出すことに成功しました。しかし、該当の患児はすでに他の治験に参加していたり、不幸にして死亡していたりしていました。PFIC2は肝移植をしなければ、成人前までに肝不全で亡くなるので治験参加者探しはスピード勝負です。結果的に、この治験では運よく治験参加者が集まったのですが、林准教授には以下のようなコメントをいただきました。

東京大学大学院 薬学系研究科 林久允准教授のコメント
「小児の希少・難治性疾患だけに、治験参加者探しに難航しました。学会で参加者探しをしましたが、珍しい疾患であり専門医が極端に少なく、適切な診断がついていない可能性がありました。また新聞などで記事にしてもらいましたが、反応はありませんでした。データに基づく参加者探しには可能性を感じました。ただ、もう少し早い段階で、データを活用していれば、効率的に参加者を探すことができたかもしれません。診断が付いていない可能性もあるため、疾患名でのデータ検索ではなく、検査結果等から治験参加者の候補となる患児を探せたことは収穫でした。」

そして、将来的には、現在私たちが医療機関から収集している個人情報のデータベースを活用して、治験に関わる先生方の働き方改革や関係する人たちの業務の効率化に貢献していきたいです。

メディカル・データ・ビジョン株式会社 取締役 中村正樹

中村 正樹

2007年10月当社入社、2018年3月取締役就任。入社以来、EBM事業に携わり、データ利活用サービスを拡大・推進、その後、MDVトライアル株式会社において、当社データを活用した新サービス拡大に取り組む。現在は、アライアンス推進室長として、対外企業・組織とのオープンアライアンス戦略を進める。
当社子会社のメディカルドメイン株式会社代表取締役社長を兼任(2021年1月~)
趣味:筋トレ、ウォーキング、お祭り(神輿担ぎ)。休日:子供の水泳教室指導・河川敷で野球練習。

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