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肝細胞癌薬物療法の処方実態とレジメン別治療期間の推移

 慢性肝炎は、B型・C型肝炎ウイルス感染などを背景に肝臓の炎症が持続する状態であり、放置すると長期的には肝硬変を経て肝細胞癌に進展する可能性がある。肝細胞癌は原発性肝癌の大部分を占め、国内における癌死亡原因でも上位に位置する。近年はソラフェニブやレンバチニブなどの分子標的薬に加え、アテゾリズマブ+ベバシズマブやデュルバルマブ+トレメリムマブといった免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法が1次治療の標準的な治療選択肢として位置づけられ、進行肝細胞癌の薬物療法は多様化が進んでいる。

厚生労働省は7月28日を「日本肝炎デー」と定め、この日を含む1週間を「肝臓週間」としており、ウイルス性肝炎や肝疾患への関心が高まる時期にあたる。
そこで、MDV analyzer、MDV analyzer for Oncologyを用いて、MDVのDPCデータから慢性肝炎・肝細胞癌患者数の推移およびレジメン治療の実態を分析した。

分析条件
対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ

1-1. 慢性肝炎(実患者数)-地域別推移

慢性肝炎の地域別患者数推移を分析した。

対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ

推移:

 実患者数の絶対数は関東が最多で2021年51,487人から2025年46,994人へ、次いで近畿は39,636人から36,568人、中部は26,322人から22,931人で推移し、総計は187,270人から171,982人となった。地域ごとの患者数規模が異なるため、2021年を100とした指数を用いて増減率を比較すると、中部が87.1(2021年比▲12.9%)と最も減少率が大きく、次いで関東・九州・沖縄がともに91.3(▲8.7%)、四国91.4(▲8.6%)であった。一方、北海道は97.1(▲2.9%)、東北は98.9(▲1.1%)にとどまり、相対的な減少幅は小さかった。

参考:慢性肝炎 実患者数の指数推移(地域別、2021年=100)

見解:

 慢性肝炎の実患者数は絶対数でみると関東・近畿など大都市圏が上位を占めるが、母数の規模が地域ごとに異なるため、増減傾向は指数(相対比較)で捉える必要がある。指数でみると、中部や関東、九州・沖縄、四国など幅広い地域で8~13%程度の減少がみられた一方、北海道・東北は相対的な減少幅が小さく、地域による差が大きいことが分かった。C型肝炎に対する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及やB型肝炎に対する核酸アナログ製剤による長期管理などを背景に、ウイルス性慢性肝炎の患者数は全国的に減少傾向にあると考えられるが、その減少ペースには地域差があり、人口動態や医療提供体制の違いなどが影響している可能性がある。

1-2. 肝細胞癌(実患者数)-地域別推移

肝細胞癌の地域別実患者数推移を分析した。

対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ

推移

 実患者数の絶対数は関東が最多で2021年10,512人から2025年10,105人へ、近畿は8,613人から8,358人、中部は5,075人から4,891人で推移し、総計は39,105人から37,501人へ緩やかに減少した。もっとも、地域ごとの母数(総患者数)が異なるため、2021年を100とした指数で増減率を比較すると、四国が91.3(2021年比▲8.7%)と最も減少率が大きく、次いで九州・沖縄93.8(▲6.2%)、東北95.7(▲4.3%)であった。一方、絶対数で最多の関東は96.1(▲3.9%)、近畿は97.0(▲3.0%)にとどまり、相対的な減少幅はむしろ小さかった。

参考:肝細胞癌 実患者数の指数推移(地域別、2021年=100)

見解:

 肝細胞癌の実患者数は絶対数でみると関東・近畿など大都市圏が上位を占めるが、母数の規模が地域ごとに異なるため、増減傾向は指数(相対比較)で捉える必要がある。指数でみると、四国や九州・沖縄など地方部でより大きな減少率がみられた一方、近畿は2024年から2025年にかけて微増に転じるなど、大都市圏の中には下げ止まりの兆しがみられる地域もあった。ウイルス性肝炎由来の症例が減少する一方、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)・代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH、旧NASH)や生活習慣病を背景とした肝細胞癌の発生割合の変化が指摘されており、原因構成の変化に加え、地域ごとの高齢化の進行速度や医療アクセスの違いも、相対的な減少率の差に関与している可能性がある。

2-1. 1stライン-レジメン別患者数・投与期間況

続いて、各ラインのレジメン別患者数・平均投与期間を分析した。

対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
1stライン実施患者数:9,417人

推移

 1stラインでは「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」が4,822人と突出して多く、次いで「レンバチニブ単独」2,670人、「デュルバルマブ+トレメリムマブ」766人であった。平均投与期間は「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」191.7日、「レンバチニブ単独」146.4日であった。1stライン全体の実施患者数は合計9,417人であった。

見解:

 1stラインでは免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法が最多を占め、分子標的薬単独療法を上回る実施状況が確認された。両レジメンとも平均投与期間が100日を超えており、進行肝細胞癌に対する1次治療として一定期間継続使用されている実態がうかがえる。

2-2. 2ndライン-レジメン別患者数・投与期間

対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
2ndライン実施患者数:4,296人

推移

 2ndラインでは「レンバチニブ単独」が1,823人と最多であり、「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」1,253人が続いた。平均投与期間はアテゾリズマブ+ベバシズマブが162.4日と最長で、レンバチニブ単独は138.4日であった。2ndライン全体の実施患者数は合計4,296人であり、1stライン(9,417人)の45.6%に相当した。

見解:

 2ndラインでは1stラインで受けた治療から他レジメンへ移行する患者が含まれ、レンバチニブ単独が最多となった。アテゾリズマブ+ベバシズマブは2ndラインでも投与期間が長く、良好な治療継続性を反映している可能性がある。実施患者数の規模を単純に比較すると、2ndライン実施患者数は1stラインの45.6%に相当し、病勢進行や副作用等により後方ラインへ治療を継続できない患者が一定数存在する可能性がある。ただし、この数値は各ラインの実施患者数を集計・比較したものであり、個々の患者の治療移行を追跡した数値ではない点に留意する必要がある。

2-3. 3rdライン-レジメン別患者数・投与期間

対象期間:2021年1月~2025年12月
対象施設:指定年月のデータが全て揃っている病院のみ
3rdライン実施患者数:2,128人

推移

 3rdラインでは「レンバチニブ単独」509人が最多、次いで「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」435人、「カボザンチニブ単独」337人であった。平均投与期間はアテゾリズマブ+ベバシズマブが163.2日、カボザンチニブ単独が90.3日であった。3rdライン全体の実施患者数は合計2,128人であり、2ndライン(4,296人)の49.5%に相当した。

見解:

 3rdラインに至ると全体の患者数は1st・2ndラインと比べ大きく減少し、カボザンチニブ単独やソラフェニブ単独など後方治療で選択されやすい薬剤も一定数上位に含まれた。アテゾリズマブ+ベバシズマブは3rdラインでも投与期間が長く、ラインを問わず継続使用されやすいレジメンであることが示唆された。ライン別の実施患者数を通してみると、1stライン9,417人に対して2ndラインは45.6%、3rdラインは2ndライン比49.5%(1stライン比では約23%)まで縮小しており、ラインが進むにつれて、各ラインの実施患者数規模は減少する傾向が確認された。なお、本比較は各ラインの実施患者数の規模を対比したものであり、患者単位の治療移行実績を直接示すものではない点に留意する必要がある。

※本記事は2026年8月3日付で公開されたものです。

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