びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を中心としたリンパ腫患者数推移とレジメン別治療実態
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は非ホジキンリンパ腫で最も頻度が高く、高齢者に多い侵襲性疾患である。長年、悪性リンパ腫に対する化学療法レジメンであるR-CHOPが標準治療とされてきたが、POLARIX試験の結果等を受け、造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)ではポラツズマブ ベドチン+R-CHPがIPIスコア2以上・18~80歳の患者の標準治療の一つに位置づけられている。再発・難治例に対してはエプコリタマブやCAR-T細胞療法も治療選択肢として広がりを見せている。なお、本レポート作成時点(2026年9月)以降の関連動向は末尾「4.今後の動向(参考情報)」にまとめて記載する。
9月15日は「世界リンパ腫デー(World Lymphoma Awareness Day)」にあたり、リンパ腫の疾患啓発が世界的に展開される時期である。そこで今回はDLBCLを中心に、濾胞性リンパ腫(FL)・ホジキンリンパ腫(HL)の患者数推移とあわせ、ライン別レジメン実施状況、ならびにエプコリタマブおよびCAR-T細胞療法の使用動向を、MDV analyzer、MDV analyzer for Oncologyを用いて分析した。
1.患者数分析-DLBCL・濾胞性リンパ腫(FL)・ホジキンリンパ腫(HL)

対象期間:2023年1月~2025年12月
対象施設:基礎条件該当施設438施設(データが揃っている施設に限定)
※構成比はDLBCL・FL・HL合計に占める割合を表す
推移:
DLBCL・FL・HLの構成比(DLBCL・FL・HL合計に占める割合)は、2023年の70.8%、24.2%、5.0%に対し、2025年は70.8%、24.6%、4.6%となった。2023年を100とした指数ではFL110.5、DLBCL108.4と増加した一方、HLは100.1とほぼ横ばいであった。

見解:
DLBCL・FLは増加傾向が続く一方、HLは横ばいで推移し、疾患ごとに患者数の推移パターンが異なることが確認された。年齢分布もHLのみ若年層への広がりがみられ、年齢階層で二峰性が見て取れた。
2-1. 1stライン-レジメン別構成比

対象期間:2023年1月~2025年12月
対象患者:DLBCLの1stライン治療患者(対象患者数は期間中に増加傾向)
推移:
「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」は四半期ごとに増加し、構成比も2023年31.3%から2025年52.1%へ拡大した。一方「R-CHOP」は同46.1%から26.5%へ縮小し、2024年前後で両者の構成比が逆転した。上位2レジメンに次ぐ「EPOCH-R」「BR+pola」「CHOP」はいずれも小規模かつ緩やかな減少傾向で、「その他」は同12.6%から13.9%へやや拡大した。

見解:
POLARIX試験の結果等を背景に、標準治療がR-CHOPから「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」へ置き換わる動きが明確化しており、1次治療の切り替わりが実臨床で進行していることがうかがえる。造血器腫瘍診療ガイドライン第3.1版(2024年版)の時点で既にポラツズマブ ベドチン+R-CHPはIPI2以上の患者における標準治療の一つと位置づけられており、本データが示す構成比の逆転はガイドライン上の位置づけが実臨床へと定着しつつある状況を反映しているといえる。上位5レジメン以外は合計でも構成比10%台前半にとどまり、1stラインの治療選択は上位2レジメンへの集約が進んでいる。
2-2. 2ndライン-レジメン別構成比

対象期間:2023年1月~2025年12月
対象患者:DLBCLの2ndライン治療患者(対象期間中はほぼ横ばい)
推移:
2023年から2025年にかけて、「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」は構成比12.3%から20.5%へ増加した一方、「BR+pola」は同21.3%から15.6%、「R-CHOP」は同17.8%から10.1%へ減少した。「R-mono」「EPOCH-R」は小規模ながら比較的横ばいに推移した。「その他」は同36.2%から43.1%へ拡大し、上位5レジメンを除く多様なレジメンの合計が最大の構成比を占めた。2ndラインの3年間合計は1stラインの3年間合計に対し約28.2%の処方実施規模であった。

見解:
2ndラインでは「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」が構成比20.5%で最大となった。ポラツズマブ ベドチン+R-CHPは通常1stラインで用いられる治療だが、2ndラインで集計された要因は、①前治療も同一の「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」で休薬期間等の影響でライン変更とみなされたケース、②前治療のR-CHOPやR-monoなどにポラツズマブ ベドチンが追加されライン変更とみなされたとみられるケース、この大きく2パターンに集約され、これらに該当しない例は少数にとどまったといえる。再発・難治性DLBCLに対する代表的な治療選択肢の一つであるBR+polaの推移(構成比21.3%→15.6%)も参考指標として捉えられる。また、本比較は同一患者の治療移行率ではなく、各ラインの延べ患者数の比率であり、患者単位の治療移行実績を示すものではない。関連する新規承認等の動向については、本レポート末尾「4.今後の動向(参考情報)」にまとめている。
2-3. 3rdライン-レジメン別構成比

対象期間:2023年1月~2025年12月
対象患者:DLBCLの3rdライン治療患者(対象期間中に増加傾向)
推移:
2023年から2025年にかけて、「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」は構成比14.9%から17.3%へ増加した一方、「BR+pola」は同21.2%から10.9%、「R-CHOP」は同13.7%から7.0%へ減少した。「EPOCH-R」「R-mono」は小規模ながら横ばいで推移した。3rdライン全体は2ndラインに対し約55.9%の処方実施規模であった。

見解:
3rdラインでも「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」が構成比17.3%で最大となった。2-2と同様、後方ラインにおけるポラツズマブ ベドチン+R-CHPのレジメン構成比については参考値として解釈する必要がある。2-2で確認したレジメン継続パターンの傾向(①前治療も同一の「ポラツズマブ ベドチン+R-CHP」であるケース、②前治療のR-CHOPやR-monoなどにポラツズマブ ベドチンが追加されたケース)は、3rdラインでも同様に確認された。BR+polaの推移(構成比21.2%→10.9%)も再発・難治性DLBCLに対する代表的な治療選択肢の一つとして参考指標となる。また後方ラインほど「その他」の構成比が拡大しており(39.6%→56.6%)、多様なレジメンが選択されている実態がうかがえる。処方実施規模は1stラインに対し2ndライン約28.2%、3rdラインは2ndライン比約55.9%であった。なお本比較は2-2同様、患者単位の治療移行実績を示すものではない。
3-1. エプコリタマブ-使用割合の推移

対象期間:2023年1月~2025年12月
対象施設:基礎条件該当施設438施設(データが揃っている施設に限定)
推移:
エプコリタマブの使用割合(対DLBCL患者数)は2023年0.08%から2024年1.26%、2025年1.97%へ急速に上昇した。年齢階級別(2025年)では70歳代50.60%、80歳代28.50%と、両階級で約8割を占めた。


見解:
エプコリタマブは2024年以降、再発・難治性DLBCLの新規選択肢として急速に普及していることが確認された。年齢分布は70〜80歳代が中心であり、前治療歴の多い再発・難治例が高齢層に多い実態と整合的である。
3-2. CAR-T細胞療法との比較

推移:
CAR-T細胞療法の実施割合(対DLBCL患者数)は2023年0.19%、2024年0.30%、2025年0.51%であり、緩やかな増加がみられたものの、エプコリタマブ(2025年1.97%)と比べて使用規模は限定的であった。
見解:
CAR-T細胞療法は実施可能施設が特定の認定施設に限られることに加え、投与前のリンパ球除去化学療法を要するなど治療強度が高い。一方、エプコリタマブは使用患者の約8割を70歳代・80歳代が占めている(3-1参照)。両治療の対象患者背景や施設要件の違いが、使用規模の差に影響している可能性がある。
4. 今後の動向(参考情報)
本レポートの分析対象期間は2023年1月~2025年12月であるが、2026年に入り以下の関連動向が確認されている。①2026年3月、自家造血幹細胞移植不適応の再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫に対し、モスネツズマブ+ポラツズマブ ベドチン併用療法が新規承認された。②2026年4月、日本血液学会は同併用療法の入院使用におけるDPC算定上の注意喚起を発出しており、Pola含有レジメンをめぐるDPC上の算定・ライン判定の複雑さが学会でも認識されている。③次期改訂版となる造血器腫瘍診療ガイドライン第4版(2026年版)は2026年10月刊行予定であり、本稿執筆時点(2026年9月)では未刊行である。これらの動向は今後のDLBCL治療実態やDPCデータの解釈に影響し得るため、今後も注視していきたい。
※本記事は2026年9月1日付で公開されたものです。
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