コラム

ヘッダー画像

日本人2型糖尿病患者におけるiGlarLixiの安全性:製造販売後データベース調査RWD × 医学論文解説

論文紹介

 本研究の目的は、日本人2型糖尿病患者において、iGlarLixi*へ新たに切り替えた後の重篤な低血糖および高血糖のリスクを、実臨床データを用いて評価することでした。結論として、iGlarLixiは先行治療の違いにかかわらず、重篤な低血糖や高血糖のリスクが低いことが示され、臨床試験で得られていた安全性の傾向と整合することが示されました。研究デザイン上の特徴は、データベースを用いた観察研究であり、単に切り替え後の発現状況をみるだけでなく、インスリン グラルギン群などの対照群を設定して比較評価している点にあります。MDVデータベースを用いた製造販売後データベース調査の論文化事例として初めての報告であり、とくに対照群を設けた安全性評価を示した点で意義が大きい論文です。

*:持効型インスリンであるインスリン グラルギン100 U/mL(iGlar-100)と、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1受容体作動薬:リキシセナチド)を一定比率で配合した、用量調節可能な配合剤

日本人2型糖尿病患者におけるiGlarLixiの安全性:製造販売後データベース調査

Hideaki Kaneto, Makiko Hatanaka, Yukiko Morimoto, Yoko Takahashi, Yasuo Terauchi

題名Safety of iGlarLixi in Japanese People with Type 2 Diabetes: A Post-marketing Database Study
著者Hideaki Kaneto, Makiko Hatanaka, Yukiko Morimoto, Yoko Takahashi, Yasuo Terauchi
出典Advances in Therapy
領域2型糖尿病

PMID: 40056372 PMCID: PMC12006214 DOI: 10.1007/s12325-025-03135-5

背景

 本邦における本製造販売後データベース調査では、持効型インスリン グラルギン100 U/mL(iGlar-100)とグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1受容体作動薬、リキシセナチド)の固定比配合であり、1日1回投与で用量調節可能なiGlarLixiへ新たに切り替えられた2型糖尿病患者*の各コホートにおいて、病院での治療を要する低血糖および入院治療を要する重度高血糖の発現を評価することを目的とした。

*:GLP-1受容体作動薬±経口血糖降下薬、または経口血糖降下薬単独から切り替えた患者、ならびにGLP-1受容体作動薬および持効型インスリン±経口血糖降下薬、または持効型インスリン±経口血糖降下薬から切り替えた患者

方法

 本研究は後ろ向き観察研究であり、MDVデータベースを用いて、2型糖尿病成人患者の急性期病院データを解析した。コホート1では、iGlarLixi新規処方後に病院での治療を要する低血糖の発現率を、iGlar-100新規処方後と比較評価した。コホート2はさらに細分化し、GLP-1受容体作動薬±経口血糖降下薬、または経口血糖降下薬単独からiGlarLixiへ切り替えた患者群(コホート2A)、ならびにGLP-1受容体作動薬および持効型インスリン±経口血糖降下薬、または持効型インスリン±経口血糖降下薬から切り替えた患者群(コホート2B)において、病院での治療を要する低血糖および入院治療を要する重度高血糖の発現率を評価した。

結果

 コホート1では、iGlarLixi群438例、iGlar-100群9,295例が解析対象となり、追跡期間中央値はそれぞれ52日および44日であった。病院での治療を要する低血糖の発現率は、iGlarLixi群では0、iGlar-100群では人年当たり0.011件であった。コホート2Aでは、GLP-1受容体作動薬±経口血糖降下薬群201例、経口血糖降下薬単独群201例で、追跡期間中央値はそれぞれ76日および101日であった。コホート2Bでは、GLP-1受容体作動薬および持効型インスリン±経口血糖降下薬群255例、持効型インスリン±経口血糖降下薬群623例で、追跡期間中央値はそれぞれ73日および62日であった。コホート2Aおよび2Bでは、病院での治療を要する低血糖、ならびに入院治療を要する重度高血糖はいずれも認められなかった。

結論

 臨床試験成績と一致して、本製造販売後データベース調査では、iGlarLixiを新たに処方された日本人2型糖尿病患者において、先行する糖尿病治療薬の種類にかかわらず、重篤な低血糖または高血糖のリスクは低いことが示された。


下寺 稔

ウェルディーコンサルティング代表 日本薬剤疫学会 認定薬剤疫学家

MSD株式会社にて、安全対策業務、使用成績調査、製造販売後データベース(DB)調査、および疫学関連業務を担当した。2021年にリアルワールドデータコンサルタントとして事業を開始し、安全性監視計画および製造販売後DB調査を中心とするリアルワールドデータに関するコンサルティングをしている。

コラム一覧へ
もどる
右矢印

page top