コラム

第3回 『かかりつけ医』・『紹介受診重点医療機関』
7回シリーズ「診療報酬と病院」

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 本コラムは当社の田中賢悟が、2022年度診療報酬改定の内容を病院関係者さまの目線により近づけて分析、製薬会社の現場担当者さまが取引先さまと情報共有する場面でお役立ていただけるよう分かりやすく解説しています。なお、記載内容は個人の見解に基づくものであり、個人が所属する組織の公式見解ではありません。

「地域医療構想」と「外来機能報告制度」

 新型コロナウイルス新規感染者数が4度目のピークを迎えていた2021年5月、医師の働き方や地域医療構想の実現に対する支援強化のため、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が可決成立、28日に公布された。

 元々、第6次医療計画(2012年3月30日厚生労働省医政局長通知)では、医療機関の分化・連携を推進するための施策について語られているし、第7次医療計画(2017(平成29)年3月31日厚生労働省医政局長通知)では2016年度末に各都道府県が策定した「地域医療構想」達成にむけ取り組んでいくことが盛り込まれている。
 この計画を遂行する上で必要な改正をすることを示すこの「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」には、医師の働き方改革に関する措置整備や、医療関係職の業務の見直しなどが大見出しとして書かれているため、一見、医療者に対しての支援法といった感が強い印象があったが、よくよく読み解いていくと2020年度に創設された「病床機能再編支援事業」の位置付けを明確にし、再編する医療機関に税制優遇措置を講じる旨や、外来医療の機能の明確化・連携を強化するため、医療資源を重点的に活用する外来等について報告を義務化する政策の創設も盛り込まれていた。このような経緯を経て、本年4月ついに外来機能報告制度は施行された。

 さて、この外来機能報告制度について、「報告制度」という名称ではあるが、かつての「病床機能報告制度」のように医療機関が自分たちで診療データを収集し統計して報告するというものではなく、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下「NDB」という)で把握できる項目を基本とし、医療機関側はその結果に対して自分たちの医療機関が「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関となるか」の意向を都道府県知事に回答する形を取る。また、報告義務が課せられる対象となる医療機関も、病院だけではなく高額な医療機器等による検査を集中的に実施している診療所も対象としていることから、この制度に対する取り組み姿勢と厚生労働省の地域医療構想に対する本気度合いがうかがい知れる。
 一方でNDBというデータに基づく集計結果は、医療機関の事務作業だけで見れば作業が軽減されるからなんとも有難い話であろうが、データ上には存在し得ない患者への心遣いや、医は仁術なりと言われた古くからの医療倫理が反映されることはない。

「かかりつけ医」・「紹介受診重点医療機関療機関」

 それぞれの医療機関は、外来機能報告制度の中で一定程度データに基づきふるい分けがされることになるが、最終的な判断は医療機関に託される。
 「紹介受診重点医療機関療機関」に手上げすることで「地域医療支援病院」とタッグを組んで地域で基幹的に「医療資源を重点的に活用する」医療機関となり、高度医療を提供する施設となるか、「かかりつけ医」として地域に密着した形での医療提供する施設と位置付け、地域に密着した患者と医療者の顔がみえる関係づくりをしていくのか選択をすることが求められている。
 医療者側だけではなく、医療を受ける側も軽症な疾患でも重装備の病院を選択する受療行動を脱することが求められている今、意識改革を促すためには「かかりつけ医」が中心となり、住民との距離を縮めることこそが、地域包括ケアシステム構築の第一歩だろうと思う。
 ちなみに、医師の働き方改革においては、勤務医への手立てが大きくクローズアップされているが、リフィル処方箋の導入や、服薬指導・残薬管理を薬剤師に託すなどといった形で診療所の医師にむけても医師の業務軽減に関わる制度が拡充されてきたことを忘れないでおきたい。

第10回第8次医療計画等に関する検討会 かかりつけ医機能について

出典:「医療提供体制のあり方」日本医師会・四病院団体協議会合同提言(2013年8月8日)
第10回第8次医療計画等に関する検討会 かかりつけ医機能について

https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/131007_1.pdf

田中賢悟

販売企画部 プロダクト企画ユニット長
視能訓練士、介護支援専門員、日本医業経営コンサルタント協会会員
1994年高岡市民病院入職、2007年医事課に異動後、経営管理室兼務。病院経営改善プロジェクトにて、診療行為分析やクリニカルパス改善のほか、病棟再編成を担う。2020年現職、「EVE」「MC」など病院向けソリューションの製品改良の他、「MDV Must」「MDV AP」など新製品企画に携わる。防災士、日本DMATタスク業務調整員など、災害現場の医療活動や地域防災活動の指導者の一面も持つ。

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