コラム

第7回 『2024年度診療報酬改定にむけて』
7回シリーズ「診療報酬と病院」

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 本コラムは当社の田中賢悟が、2022年度診療報酬改定の内容を病院関係者さまの目線により近づけて分析、製薬会社の現場担当者さまが取引先さまと情報共有する場面でお役立ていただけるよう分かりやすく解説しています。なお、記載内容は個人の見解に基づくものであり、個人が所属する組織の公式見解ではありません。

「医療機関にとっての11月」

 診療報酬が改定された年度の11月とは、病院としても改定にともなう経過措置が終了し、本来の病院の診療実績が実収入という形で明らかとなってくる最初の月となる。

 また、診療報酬の改定内容が示している厚生労働省が病院に求めている方向性を、6カ月の準備期間を経て自院の経営方針に反映し取り組み始めた対応の結果が具現化しはじめる時期となる。

 そのタイミングに重なるように診療報酬影響度調査が動き出す。
 10月26日に開催された「中央社会保険医療協議会 総会(第530回)」で、「2022(令和4)年度調査の内容について」が公表された。

診療報酬基本問題小委員会からの報告について

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001005055.pdf

 本調査の内容は例年と同様に改定の付帯意見に基づいた調査項目として2022度については、7項目、2023度は4項目が掲げられた。

 調査内容の詳細については、厚生労働省の資料を確認いただくとして、医療機関としてはそこに記載されている内容から、次の診療報酬改定に向けてどのような論点が議論されるかを推し量る必要がある。

 特に本年度調査に関しては、従来からある医療機関向け調査のほか、外来医療に係る評価等について、一般の方へのWeb調査が盛り込まれていることに注目したい。

 調査の内容としては、オンライン診療などといった情報通信機器を用いた診療についての評価となっているが、一般的な世論調査ではなく、診療報酬改定に影響がある調査項目に含まれた意図について考える必要があるのではないだろうか。

 医療機関にとっての11月とは、未来に向けて視点を切り替える重要な月なのである。

「次期改定は2025年問題に向けた最後の舵取り」

 言わずもがな、次期改定は医療保険と介護保険の同時改定だ。

 そして、団塊世代がすべて後期高齢者になる2025年問題を前に、政府が目指す地域包括ケアシステム構築に向けて実質的に最後の舵が切られるときである。

 2022年度は外来機能報告制度がはじまり、国家レベルで「かかりつけ医」についての議論があった。

 そして、政府は医療DX(デジタルフォーメーション)推進に向け、マイナンバーカードと保険証を一体化した保険証(マイナ保険証)の実施時期を明示し、医療ビッグデータの活用促進も打ち出している。

 また、地域医療構想実現に向けて、課題整理や具体的な対応の検討が繰り返されている。
 総じて「医療提供体制は『治す医療』から、『治し、支える医療』への転換が進められている。」

2022(令和4)年 11 月 11 日 第8回全世代型社会保障構築会議 資料1「医療提供体制に関する議論の状況について(増田主査提出資料)」より抜粋

 私は、こういった背景がある中での次期改定は、もはや単なる市場経済における診療単価の調整だけではなく、これまでに取り上げられてきた諸課題に向き合いながら、高齢者が増加し医療・介護需要がピークを迎えると言われる「2040年問題」に向けた新たな足掛かりとしての役割を担うはずだと考えている。

厚生労働省 社会保障制度改革 2040年を展望した社会保障・働き方改革について

厚生労働省 社会保障制度改革 2040年を展望した社会保障・働き方改革について

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21483.html

 全7回シリーズはこれにて終了となります。ありがとうございました。

田中賢悟

ユーザサポート部 ユーザネットワークユニット
視能訓練士、介護支援専門員、日本医業経営コンサルタント協会会員
1994年高岡市民病院入職、2007年医事課に異動後、経営管理室兼務。病院経営改善プロジェクトにて、診療行為分析やクリニカルパス改善のほか、病棟再編成を担う。2020年現職、「EVE」「MC」など病院向けソリューションの製品改良の他、「MDV Must」「MDV AP」など新製品企画に携わる。防災士、日本DMATタスク業務調整員など、災害現場の医療活動や地域防災活動の指導者の一面も持つ。

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