コラム

第5回 『診療報酬改定・医療機関に求められたコト』
7回シリーズ「診療報酬と病院」

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 本コラムは当社の田中賢悟が、2022年度診療報酬改定の内容を病院関係者さまの目線により近づけて分析、製薬会社の現場担当者さまが取引先さまと情報共有する場面でお役立ていただけるよう分かりやすく解説しています。なお、記載内容は個人の見解に基づくものであり、個人が所属する組織の公式見解ではありません。

「急性期充実体制加算」

 2022年度診療報酬改定から7ヶ月余りが経過した。
 改定に伴い設けられていた経過措置も、そのほとんどの項目で期日が終了し、いよいよ改定内容の影響が表にでてくる時期となった。
 経過措置の間に院内環境整備を新たな施設基準に対応させた施設もあれば、改めて院内体制を見直し自院の体制に合った診療報酬を算定することとした施設もあるだろう。
 そういった中、この2022年診療報酬改定で急性期病院の間ではセンセーショナルであった「急性期充実体制加算」は、9月1日時点の厚生局届出件数でみると157施設だった(全国厚生局届出状況・当社調べ)。
 また、2021年5月届出時点で391施設が届出ていた「総合入院体制加算」は、2022年9月1日時点の届出件数が255施設となっている(全国厚生局届出状況・当社調べ)ことから勘案すると、おおよそ高度急性期・急性期として「急性期充実体制加算」の施設基準を満たす実績があった施設は、ほぼ障壁なく「急性期充実体制加算」にスイッチできたと推察できる。
 元々「総合入院体制加算」は、2010年に旧「入院時医学管理加算」から名称と施設基準が見直され、より高度な医療を提供する総合病院を評価するために改定された経緯があり、2022年度もその算定定義が見直された。
 「急性期充実体制加算」と「総合入院体制加算」は一見すると届出に必要な施設基準は類似している項目も多いが、「急性期充実体制加算」は病床数に応じた細かな実績件数が適用されるなどして、大規模病院偏在にならないよう定義づけられており高度急性期・急性期医療機関としてはようやく実績が正しく評価されたものとなったのではないだろうか。

「回復期・慢性期」

 さて、今度は回復期・慢性期の方に視線を向けてみる。
 回復期リハビリテーション病棟入院料は、入院料5と入院料6は2年間という経過措置があるものの廃止となる(入院料6については2023年3月まで)うえ、※2022年度診療報酬改定の概要 (全体版)https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000960258.pdf(該当ページはP57) 療養病棟入院基本料についても、機能的自立度測定法(FIM)の測定が要件化され算定基準が厳格化された。
 届出実績だけで状況を確認してみると、回復期リハビリテーション病棟入院料届出施設は2021年5月届出時点で1,531施設であったが、2022年9月1日時点では1,553施設となり増加したが療養病棟入院基本料届出施設は2021年5月時届出時点で2,977施設であったものが、2022年9月1日時点では2,922施設と減少した。加えて有床診療所入院基本料届出施設も(有床診療所療養病床入院基本料施設を含む)4,932施設から4,728施設に大きく減少した。
 ミクロ的視点からみると、個々の病院の経営に対する取り組みの結果となるが、マクロな視点で俯瞰してみると、この現象は地域医療構想で厚生労働省が目指している2025年見込みに描いた進捗となんら齟齬はない。

2021年度病床機能報告について

第5回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ「令和4年度病床機能報告の実施等について」

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000951683.pdf

 第4次安倍再改造内閣が発足した同月2019年9月26日、厚生労働省は「再検証に係る具体的な対応・手法についてとりまとめ、公立・公的医療機関等の個別の診療実績データを公表、その中で424病院が「再編統合について特に議論が必要」な施設と位置付けた。
 この公表は当時大きな波紋を呼ぶこととなった。
 現在、各都道府県において地域医療構想が作成されており、検討状況について定期的に公表することになっている(直近は2022年9月末、各都道府県ホームーページ等で公表)。
 医療機関、特に公立・公的医療機関は、地域医療構想と真正面から向き合わなければいけない。

田中賢悟

販売企画部 プロダクト企画ユニット長
視能訓練士、介護支援専門員、日本医業経営コンサルタント協会会員
1994年高岡市民病院入職、2007年医事課に異動後、経営管理室兼務。病院経営改善プロジェクトにて、診療行為分析やクリニカルパス改善のほか、病棟再編成を担う。2020年現職、「EVE」「MC」など病院向けソリューションの製品改良の他、「MDV Must」「MDV AP」など新製品企画に携わる。防災士、日本DMATタスク業務調整員など、災害現場の医療活動や地域防災活動の指導者の一面も持つ。

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