コラム

「EBMデータのあゆみ・現在(前編)」 EBM Inside 第1回

まずは自己紹介をお願いします。

松林

EBM本部の本部長を務めております松林大輔と申します。私は2008年11月に入社しました。前職で7年半、電子カルテシステムの導入インストラクターの仕事をしていた関係で、医事・医療機関の基幹システムに関連した会社を探していたところ、当社に興味を持ちました。

採用時は当社の病院向け経営支援システムの営業担当として、2008年12月1日で内定をいただいたのですが、数日後に会社から突然電話があり、「医事データ利活用の事業部が新しく立ち上がったので、ご経歴から考えるとそちら方が向いていると思うのですが如何でしょうか?早いほうが良いので早速、来週からの出社は可能ですか?」という連絡がありました。ベンチャー企業気質が如実に表れているこの連絡に、私も入社日まで特別な予定がなかったため、「問題ないです!」と答え、立ち上がったばかりのEBM事業部に配属となりました。

そのころ当社のEBM事業はスタートしたばかりで、当時はまだ顧客の取引実績もほぼない状況で、メンバーは中村(現取締役)、開発担当1名、新卒入社の解析担当者1名、そして、当時筆頭株主だった企業から営業として出向でいらしていた方1名と私の計5人でのスタートとなりました。

日本最大級の量と質を誇る診療データベースを保有

転職活動の際に、MDVに興味を持ったポイントは何でしたか?

松林

もともと電子カルテの仕事をしていましたので、当時から当社が「カルテを患者に返す、患者のものだから」という理念を掲げていたところにも感銘を受け、私もそういった仕事に引き続き携わりたいと思い、入社を決めました。

その時点での営業面での状況はどうでしたか? 当時はデータ活用がまだ盛んではなかった時期でしたが、どのように窓口を広げ、実際の成約につなげていったのでしょうか?

松林

当時はまったくの新規スタートで、顧客リストもありませんでした。そこで最初は製薬企業の代表電話に連絡し、「当社はデータを扱っている会社です。ご担当者におつなぎいただけませんか?」と尋ねたのですが、「お取引実績やお約束のない方は全てお断りしています。」とシャットアウトされることばかりでした。
研究論文に記載されている著者や所属先にアプローチすることで代表電話にかけるよりはつなげていただけることも多くなり、少しずつアポイントを取り、ご説明をさせていただく機会を増やしていきました。

スタート当時のデータは「15病院100万人のデータ」とアピールしていたのですが、ある製薬企業のマーケティング担当者から「でもその結果は15病院だけの傾向ですよね?日本全国の傾向とは言えませんよね?」と指摘を受けたこともあり、病院数や症例数について考え直すきっかけとなりました。
その後は病院数を増やす方向にシフトしましたが、今の当社の様に病院専任フォローチームがなかったため、専任の担当者をアサインしてもらい病院にアプローチすることになりました。また、当時のデータソースは現在とは異なり、病院向けに提供していた「マーキングビジョン(MV)」(現在のEVE※1の前身のシステム)を使用していたので、院内のレセコンや電子カルテから医事情報を抽出し、取り込み用のフォーマットに変換後データベース化していました。
請求情報以外にも、保険診療以外の部分の明細書情報(自費診療の情報、紹介状、ワクチン情報など)が取れるメリットもありましたが、データを取り出せる電子カルテやレセコンのメーカーが限定されているため、データの二次利用許諾をいただける病院の数を増やすことが非常に難しかった時期がありました。

その後、厚生労働省や社会保険診療報酬支払基金に提出する共通のフォーマットであるレセプト・DPCデータに変更していくこととなり、ようやく100病院からデータの二次利用許諾をいただけるようになりました。
100病院が集まると、症例数も増えてきますので、症例数が1,000万人を超えたころから今まで門前払いだった担当者も話を聞いてみようかな?というような形でお客様の反応が変わり、逆にお問い合わせをいただくことも徐々にではありますが増えていきました。

診療データベースの実患者数推移

当時は、まず製薬企業のマーケティング部門がアプローチすべき部門だったのでしょうか?

松林

はい、製薬企業には、マーケティング部門やメディカルアフェアーズ、R&DやPVなど様々な部門がありますが、データを使う分野という意味で、まずはマーケティング部門かメディカルアフェアーズのどちらかと考えていました。医薬品卸の販売データ分析やアンケートの分析が主流だったマーケティング部門で実臨床での使用実態が把握できるデータ分析という提案を糸口に、同じ会社の中で他部門へ横展開していく動きをしていきました。

「データベースがある規模を越えてから、顧客の反応や思考に変化があった」という話がありましたが、他にはその後、なにか事業拡大のキーとなる出来事はありましたか?

松林

外資系製薬企業は、グローバルでリアルワールドデータを分析する文化があったために、比較的受け入れていただきやすかったという印象があります。その頃になりますと、一度データを利用した企業からのリピート率は高くなりました。しかし、まだ一度も利用していない企業については、引き続き最初の利用のハードルは高かったように記憶しています。
「当社のデータでは、実際の患者さんがどのような疾患でどのように薬剤を使用したかなどのデータを見ることができますので、より詳細な分析ができますよ」という話をすると、興味を持っていただけることも増えてきて、個人的な印象ですが、マーケティング部門の方は比較的柔軟で、良いものがあれば積極的に取り入れる姿勢の方が多かったように思います。

また、マーケティング部門の方は、当局や他部門からの問い合わせを受けられたことでご相談をいただくケースも多く、スピード感を求められることが多かったのですが、当時我々はまだデータを分析する解析スタッフの人数が限られていましたので、データセット提供とアドホック集計だけではニーズに対応できない場合が出てきました。
そこで、リアルタイムに、スピーディーにニーズに対応するためには、簡単な分析についてはお客様ご自身で簡単に操作できるウェブツールが必要であると考え、マーケティング部門向けの製品として『MDV analyzer』の企画・開発に進んだことはデータ利活用サービス拡大への大きなターニングポイントだったと思います。

※1:「EVE」は医療機関向けサービスで、DPC請求と出来高請求の差額を分析したり、在院日数・医療資源の投入状況などを他院と比較したりすることで、自院が診療報酬制度(DPC制度)に基づいた標準的な医療を正しく実践できているか、客観的に診療傾向を確認できるDPC分析ベンチマークシステム。

メディカル・データ・ビジョン株式会社 EBM本部長 松林 大輔

松林 大輔

医事課職員を経て臨床検査会社の電子カルテ導入部門で7年半勤務。
2008年11月当社入社。2018年4月EBM推進部門長、2023年1月よりEBM本部長就任。当社入社以来、EBM事業に携わり、「MDV analyzer」など製薬向けソリューションの企画立案も行い、データ利活用サービスの拡大・推進に従事。

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